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"FROZEN RIVER-フローズン・リバー(2008)" [movie-f]

「フローズンリバー」
公開時、気になりつつもなんとなくスルーしてしまっていた作品。

トレーラーハウスが並ぶアメリカの田舎町。
ニューヨーク州とは思えない、何もなく寒々しい景色が画面に広がる。
そんな町のトレーラーハウスのひとつで二人の息子と暮らしているレイ(メリッサ・レオ)は、
ギャンブル好きの旦那に新居の購入費用を持ち逃げされ、途方に暮れていた。
底辺で惑う、白人の中年女性の倦怠感が画面から滲む。
持ち逃げした夫を探していたレイは、ビンゴ会場の駐車場で夫の車を発見する。
逃げる車を追いかけると、その車に乗っていたのは、ライラ(ミスティ・アッパム)というアメリカンインディアンのモホーク族の女性。
ライラはキーが刺さった車を見つけただけと主張するが、もちろんレイは納得しない。
けれど彼女がお金に困っているのを見て取ったライラは、彼女に車を買い取ってくれる人間を紹介しようと提案する。
彼女について行ったレイは、中国人の不法入国者の密入国の手助けをするように言われる。
白人と一緒にいることで密入国がしやすくなると踏んで彼女に協力を求めるライラ。
はめられたと気づくレイ。ライラのふてぶてしさに苛立ちながらも、
結局お金のためにその仕事を請け負うことになる。
そして取り締まりのある正規の橋ではなく、危険を冒し車で凍った川(フローズン・リバー)を渡る二人。

救いのなさにうんざりする瞬間もある。
幼い次男の無邪気な姿がこの作品の息抜き的存在にもなっているが、
所帯やつれしたレイの雰囲気や、長男のTJ(チャーリー・マクダーモット)と言い争うシーンは、
思わず軽い嫌悪感を感じそうにもなる。
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夫に逃げられ、食うや食わずで、新居どころかレンタルテレビも支払いができずに回収されそうになるレイと、
夫の死後、子供を義理の母にとられ、彼女との確執に憤り、
うまくいかない人生に投げやりになっているようにも見えるライラ。
二人は人種や境遇を超え、少しずつシンパシーを感じあうようになる。
そして危ない橋を渡った報酬でつかの間の夢を見るレイ。
母親のことを疑い、父親への屈折した思いに引きずられながらも、彼女のことを結局は信じる息子TJ。
脚本はそれぞれの登場人物の関係性や心情を深掘りはせずに、リアルに淡々と描いている。
このまま救いがない感じで結局はだらだらと終わるのかと思いきや、
そこはサンダンス映画祭グランプリも獲った作品。一転して最後の幕切れの展開、描き方は鮮やかだった。
シンプルながら、爽快感を感じる幕切れ。
淡々とした人物像や状況の描き方が功を奏していると思う。
この作品が、日本でなかなか配給元が見つからなかったというのは悲しい話だ。

ラストにレイがとった行動そのものと、凍った川のイメージがこの映画の象徴だと思う。
追い詰められ凍った川を渡る、その心情と、茫漠とした景色は、この作品をアメリカらしい作品として認識させる。
彼の国の貧困層の生活と人種政策問題など、
理解するだけだなく感じることができないと理解しづらいかもしれないが、
最後に見えた希望が、この作品が描きたかったすべてのことなのかもしれないと思わされた。
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FROZEN RIVER
フローズン・リバー
2008/USA/97min

監督:コートニー・ハント
脚本:コートニー・ハント
撮影:リード・モラーノ
編集:ケイト・ウィリアムズ
出演: メリッサ・レオ/ミスティ・アッパム/チャーリー・マクダーモット/マーク・ブーン・ジュニア
マイケル・オキーフ/ジェイ・クレイツ/ジョン・カヌー/ディラン・カルソーナ/マイケル・スカイ


フローズン・リバー [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川映画
  • メディア: DVD



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