SSブログ

"THE BLIND SIDE-しあわせの隠れ場所(2009)" [movie-b]

『あなたの人生史上、最高の実話』

あまりに安直なキャッチコピーで、なんだかなぁ、と思ってしまった。
評価が悪くない作品だったにもかかわらず、いままで観ていなかった。
食わず嫌いは良くないなぁと思って、借りてみた。素直に、いいと思えた。そんな映画。

全米で有名なマイケル・オアーというアメフト選手。
テネシー州メンフィスのスラム街で生まれ、父親の顔を知らず、
薬物中毒の母親に育てられたマイケル。
過酷な環境で育った彼が、運よく私立高校への入学を認められたものの、
家を閉め出されホームレスになり、
雨の降る感謝祭の夜、Tシャツと短パンでとぼとぼ歩いているところを、
サンドラ・ブロック演じる裕福な白人家庭の主婦に見つけられ、彼女の家に身を寄せるところから物語は始まる。
blindside003.jpg

サンドラ演じる主婦リー・アン・テューイの思い切ったキャラクターがよい。
「元チア・リーダーの裕福な主婦」という言葉から想像しがたい、直観的な判断力と人を見る目。
ステレオタイプなものの見方に囚われない、おおらかな性格と、自分の信念を貫く心意気。
サンドラ・ブロックはこの作品で数々の賞を得たことも記憶に新しいけれど、
彼女に本当に合う役柄だったことは確かだし、彼女が演じることによって、
その存在が際立つものになったことも確かだ。
一方、マイケル・オーアを演じるクィントン・アーロンも、その役柄を見事にこなしていた。
大きな身体に似合わない敏捷な運動神経と、
保護本能(自己や家族を守る本能)に優れた彼を、
アメフトの選手として見出し守り抜いた、周囲の環境やリー・アンの家族たちの理解は相当なものだったと思う。
特に同じ年頃の娘は複雑な心境だったと思う。
彼を家族として迎え入れたことで、周囲の好奇の目やからかいに苦労したこともあったろう。
それでもマイケルを家族としてきちんと認め受け入れたところに、
リー・アンの娘らしい、心意気を感じる。
blindside002.jpg
弟のSJも彼を素直に受け入れ、家族に溶け込めるよう屈託なく接する。
そんな子供たちの存在も、この作品になくてはならないキーポイントだったし、
一歩引いたところで常に家族を優しく見守り、リー・アンのすることなすこと信じてあげる、夫ショーンの男らしさも、かなり好感度が高かった。

実話だろうが、実話でなかろうが、いい話だし、観ていて本当に心が温かくなり、
そして爽快感を感じられる映画だった。
アメフト、というスポーツを知らなくとも楽しめるし、
逆に、ドラフトの舞台裏や、練習や試合を通してどんな資質が求められるかなど、
アメフトへの理解を深めることもできる内容になっている。
blindside001.jpg

そして実在のリー・アン一家とマイケル・オアーの写真がこちら。
本当にあたたかいファミリーの雰囲気が、端的に伝わってくる。
130209769857916316427.jpg

観た後に清々しさの残る作品。

THE BLIND SIDE
しあわせの隠れ場所
2009/USA/128min

監督:ジョン・リー・ハンコック
原作:マイケル・ルイス
『ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇蹟』(ランダムハウス講談社刊)
脚本:ジョン・リー・ハンコック
撮影:アラー・キヴィロ
出演:サンドラ・ブロック/クィントン・アーロン/ティム・マッグロウ/キャシー・ベイ
リリー・コリンズ/ジェイ・ヘッド/レイ・マッキノン/キム・ディケンズ/キャサリン・ダイアー


しあわせの隠れ場所 [DVD]

しあわせの隠れ場所 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


しあわせの隠れ場所 [Blu-ray]

しあわせの隠れ場所 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: Blu-ray



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

"BIUTIFUL-ビューティフル(2010)" [movie-b]

「大好きな映画とは??」

何度も観て、細部も記憶に刻み、観ると気分が上がったり、心地良かったり、
そしてただそれだけではなく「何か」を感じられる。
そんな作用を私にもたらす映画を、私は「好きだ」とはっきり言い切れる。
いままでに観た作品は数え上げるときりがないけれど、その中で本気でそう思えたのはほんの一握り。
"ビューティフル-BIUTIFUL"
この作品はそういった個人的嗜好とは一線を画す。
こうして観終わった後にも深く満たされた感覚があり、
この映画を観に来てよかったと思っているにもかかわらず、もっと何度も観たいと思うことができず、
この映画について考えようとすると心がきりきりと締め付けられるようで、
思考はあちらこちらと惑い、考えが定まらず、どうしても「好き」と言い切れない。
それはアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥという監督が、
どれだけの表現能力を持ちえている作家なのかということを端的に表しているような気もする。
彼の作品を観るという行為に対して、定まった感情が持てない。
それはとりもなおさず彼の作品がどれだけ強いメッセージ性と問題性を孕んでいるか、ということにも通じる。
死、は昔から文学や映画や音楽の中でテーマとして捉えられてきているが、
その中でも、このようなネガティブなもの、誰もが避けることのできないもの、
大昔から何度も何度も取り上げられたこの普遍的なテーマを、
これほどまでに色濃く描ききっている作品はやはりそこまで多くないのでは、と思う。

主人公ウスバル(ハビエル・バルデム)の存在感がすごい。
338081_01_01_02.jpg
オープニングは最後につながる伏線として美しくも情緒的な情景が描かれているが、
始めから終わりまで、彼の存在感無くしてはこの作品はありえなかった気がする。
バルセロナに暮らすウスバルは、精神的に不安定な妻マランブラ(マリセル・アルバレス)と別れ、
ふたりの子供を育てるためにアフリカや中国からの不法移民への仕事斡旋や、警察への仲介役を生業として金を稼いでいた。
338081_01_03_02.jpg
身体の不調を感じた彼は病院で検査を受けるが、結果は余命2か月という過酷なものだった。
家族に伝えられず日々を生きるウスバルの周りでは様々なでき事が起こる。
その起こる事柄にも執拗なまでに「死」の影がまとわりついているのだ。
ヨーロッパの中でもラテン系で比較的治安が悪いイメージのあるスペイン。
大都市バルセロナのスラムはこの作品の混沌としたイメージにぴったりな場所だと思う。
スラム街のピリピリした雰囲気、繁華街で商売をする移民やジプシーの存在、
サグラダ・ファミリアの荘厳さがむしろ夢のようにすら思われる汚いアパートや路地。
作品の細部にまでイニャリトゥ監督の意識が入り込んでいる。
もうひとつ、死にまつわる出来事にウスバルの存在が大きく絡むのは、霊的な体験談である。
元々霊媒体質として描かれる彼の体験が、可視化され、
視覚・聴覚ともに映像化される様は見事だ。
胡散臭ささえ感じられるこれらの演出は、
観終わった今では、すべてこの映画に必要不可欠なものだった、ということが理解できる。
そして、いままでの監督作品にもその傾向は強く出ていたけれど、
音が特に重要なファクターとして存在するように感じられる。
たとえば模倣される海と風の音。耳障りな街の音。いかがわしいクラブでの強烈なダンスミュージック。
映像的には手触りすら感じられそうなリアリティを追求するイニャリトゥ監督は、
時に不快感を感じるほど強く聴覚に訴える音響効果で、観る者の感覚を研ぎ澄ます。

色々な意味でこれほどまでに心をかき乱される作品に出会ったのは久しぶりだった。
死と向き合う。ある意味こんなにも人間らしい行為は他にないかもしれない。
そこに至る過程のドラマは人それぞれだし、
自分の年齢だとまだまだ遠いこととして取り合うことをしなかったりするけれど、
あえて避けずに考えることも、時には必要じゃないかとさえ思えた。
そして家族というファクター。
特にウスバルの子供たちに対する愛情と、子供たちのウスバルへの信頼は、本当に純粋だと思えた。
338081_01_02_02.jpg
そして精神的な問題を抱えるがゆえに、その家族という温かなサークルからはみ出してしまう母マランブラ。
彼女の存在もまた、死というファクターに捉えられていたのかもしれない。
338081_01_04_02.jpg

重く、長い映画だった。
けれどその中身は本当に濃く、蔑ろにできる部分は少しもない。
死と、そして死を描くことによって生を、生を描くことによって愛を、描いているのだと思った。
今年観た中でいちばん重みを感じ、観た後に強い充実感を感じられた映画。

BIUTIFUL ビューティフル(2010)
BIUTIFUL
2010/ESP=MEX/148min

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
原案:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ/アルマンド・ボー/ニコラス・ヒアコボーネ
撮影: ロドリゴ・プリエト
美術:ブリジット・ブロシュ
編集:スティーヴン・ミリオン
音楽:グスターボ・サンタオラヤ
出演:ハビエル・バルデム ウスバル
マリセル・アルバレス マランブラ
エドゥアルド・フェルナンデス ティト
ディアリァトゥ・ダフ イヘ
チェン・ツァイシェン ハイ
アナー・ボウチャイブ アナ
ギレルモ・エストレヤ マテオ
ルオ・チン リウェイ

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

"BLACK SWAN-ブラック・スワン(2010)" [movie-b]

色んな意味で久しぶりに衝撃を感じた作品。
もちろんナタリー・ポートマンのアカデミー主演女優賞で一気に注目度の上がった作品だけれど、
πのダーレン・アロノフスキーという一癖も二癖もある監督×バレエ×サイコスリラーが、
どんな形で料理されているのやら、興味津々で映画館へ。
アカデミー効果か、日曜日の映画館は満席状態。

まず、ナタリー・ポートマン演じるニナの日常の様子が描かれる。
彼女の無駄のない、ダンサーらしい体型に驚く。
幼少期にバレエをやっていて1年ほどこの作品のためにトレーニングを積んだとはいえ、
アスリート的な無駄のない筋肉の付き方に、驚く。
さすがにダンス・ダブル(代役)を使っているらしいけれど、もちろん彼女が実際に踊っているシーンは多いだろうし、
アップになったときの表情、指先の動き、
見間違えることなくポートマンの所作と思われるシーンだけでも、
素直に彼女の努力が並大抵のものでなかっただろうことが感じられる。
すごい女優だ。

ポートマン演じるニナはニューヨークのバレエカンパニーのダンサー。
美しいが完璧に踊ることを目標とし、練習もまじめにやるいい子ちゃんタイプ。
白鳥の湖の主役に抜擢されたい彼女は、役を射止めるために振付師のトマのところへ交渉に行く。
トマは取り合わないがちょっとした気まぐれで彼女にキスしたところ、
彼の唇をかんだニナに隠された情熱を感じ、発表直前になって彼女をプリマドンナに抜擢する。
しかし、繊細で臆病な白鳥は理想的に表現できても、
情熱的で煽情的な黒鳥はどんなに練習を積んでも表現できない。
悩むニナの周囲には色々なことが起こり始める。
blackswan 001.jpg

バレエ映画として考えてもクオリティが高いのに、サスペンスとしての出来ももちろん素晴らしい。
複数の伏線が、作品の冒頭からちらちらと現れる。
・内なる自分への恐怖
・彼女を溺愛し過ぎ束縛する母への反発心と、その反発心を嫌悪する心
・引退させられたプリマドンナ、ベスの運命に怯える心
・受け入れられないトマへの想いと、ライバル・リリーへの嫉妬心が煽る強迫観念
・プレッシャーで痛めつけられてゆく心と身体
支える脇役もポートマンに負けない演技力。
ヴァンサン・カッセルはベテランの域に達していると思え、
バーバラ・ハーシーの歪んだ母親の愛情の表現も素晴らしく、
新人、ミラ・キュニスの攻撃的なコケットリィも魅力的だった。
blackswan 003.jpg
そして、引退し、自滅してゆくプリマドンナ・ベスを演じるウィノナ・ライダーの壊れっぷり!!
あまりに小気味よくて、もう少し彼女の出演シーンがあっても良かったかもと思わされた。

それぞれのシーン、それぞれの登場人物の描き方のバランスがよく秀逸で、
妄想とも現実ともつかない恐怖と、
先の読めそうで読めない展開にドキドキし、早く次の展開を知りたいと思う反面、
性的、暴力的な表現に、嫌悪感を覚える観客もいたと思う。
一方で卓越したスピード感と映像表現力にダーレン・アロノフスキーという監督の実力を見た気がする。

観終わった後、
あれほどのプレッシャーで精神をすり減らし、自らを傷つけ、
それでも至高の芸術を自らが体現し、圧倒的な称賛を得るのと、
平凡で退屈な日々を送り、小さな幸せと不幸せを交互に感じながら長生きするのと、
どちらが本当に生きていると言えるのだろうかと、しばし考えてしまった。
blackswan 002.jpg

BLACK SWAN
ブラック・スワン
2010/USA/108min

監督:ダーレン・アロノフスキー
原案:アンドレス・ハインツ
脚本:マーク・ヘイマン/アンドレス・ハインツ/ジョン・マクラフリン
撮影:マシュー・リバティーク
衣装デザイン:エイミー・ウェストコット
振付:バンジャマン・ミルピエ
音楽:クリント・マンセル
出演:ナタリー・ポートマン/ヴァンサン・カッセル/ミラ・キュニス/バーバラ・ハーシー
ウィノナ・ライダー/バンジャマン・ミルピエ/クセニア・ソロ/クリスティーナ・アナパウ





nice!(2)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

"BIRD-バード"(1988) [movie-b]

この三連休、前半実家、後半は東京でゆっくり過ごしました。
そろそろ20歳になろうかという我が家の化け猫も元気です。人で言えば90を超す長寿猫。
20110321001.JPG
これだけ長生きだとそのうち人語を解するようになるんじゃないかと思えてきます。
大体の家では自分のところの子がいちばん可愛いと思っているでしょうが、
気立ての良さではこの子にかなう子はいないんじゃないかと思うくらい、おとなしくて可愛いやつです。
まだまだ長生きしてほしい。

そしてこの連休は、軌道上いちばん月が地球に近く見えるとのこと。
帰省時に見た満月がとてもきれいでした。
20110321002.JPG

--------------------------------------------------------------------------
さて、連休最終日は雨、大掃除を終え、何を観ようか考えた挙句、ちょっと重めのこちらを。
クリント・イーストウッド監督『バード』
"Bird""Yardbird"の愛称で知られる、チャーリー・パーカーの生涯を、
幾つもの場面ををコラージュしたような手法で重ねあげた作品。
イーストウッドは大の音楽好き、中でもJAZZに関してはかなり造詣が深く、
パーカーの演奏も実物を観たことがあるそう。
そんな彼が、"スモーク"や"ゴースト・ドッグ"のフォレスト・ウィティカーを主演に、
こだわりぬいた作品で、ゴールデン・グローブ最優秀監督賞に輝いた。
随所に、挿入される音楽も然り、時代背景や演出にも、イーストウッドらしい繊細さと大胆さが感じられる。
そのキャリアの前半から、ずっと、薬物中毒とアルコール中毒に悩まされ、
その演奏の素晴らしさと対象にとても破壊的でありながら繊細なチャーリー・パーカー。
時に暴力をふるったり、自傷行為を行ったとは思えないほど、
その風貌はゆったりと優しげ。
主演のフォレスト・ウィティカーの雰囲気はまさにチャーリー・パーカーそのもので、
彼の実力と、彼を選んだイーストウッドの見識に脱帽。
bird001.jpg

チャーリー・パーカーの生涯はこちらのサイトがとても詳しいので、もし興味があればご参照を。
BIRDLIVES-Thinking about Charie Parker
http://www.birdlives.co.uk/

とにかく、演奏と、そして演奏の合間に絶え間ない不安と戦うために彼が選んだ、
女性、そして酒・薬との関係がたたみかけるように描かれる。
観ていて辛くなってしまうほど、素晴らしい演奏シーンの合間に彼のハードな体験が描かれるのだが、
その中でも印象的だったのが、娘の死を聴いたチャーリーが、妻のチャンに向け、何度もテレグラムをうつシーン。
思いついたことを立て続けに、そして薬で朦朧としながらもテレグラムをうち続ける。見守る女。
どんどん深みに落ちてゆく彼の精神状態が、見事に描かれる。
こういう悲しみの描き方にイーストウッドらしさがにじむ。

そして彼の死は、雷鳴の轟く、大雨の夜のこと。
彼の生涯の幕切れは、こんなシーンで表わされる。
最後の今際の際に彼の面倒をみていた男爵夫人の家のカウチ。
TVショーを笑いながら観ていたチャーリーがふと、発作に捕らわれる。
男爵夫人が呼んだ医師が彼の死因を電話で語るシーン。
「黒人男性、推定年齢65」という言葉をさえぎるように、男爵夫人が一言。
「34よ」
彼の破滅的な生涯はこの一言に集約されるような気がした。

JAZZという音楽ジャンルに、少しでも興味があるなら、
そしてイーストウッドという稀有な監督の才能を確かめたいなら、是非観て欲しい。名作。
bird002.jpg

BIRD
バード
1988/USA/161min

監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド
製作総指揮:デヴィッド・ヴァルデス
脚本:ジョエル・オリアンスキー
撮影:ジャック・N・グリーン
音楽:レニー・ニーハウス
出演:フォレスト・ウィッテカー/ダイアン・ヴェノーラ/マイケル・ゼルニカー
サミュエル・E・ライト/キース・デヴィッド/マイケル・マクガイア/ジェームズ・ハンディ
デイモン・ウィッテカー/サム・ロバーズ/ビル・コッブス/ジョン・ウィザースプーン
トニー・トッドアンナ・トムソン/トニー・コックス


バード [DVD]

バード [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


サントラも是非

バード(オリジナル・サウンドトラック)

バード(オリジナル・サウンドトラック)

  • アーティスト: チャーリー・パーカー
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
  • 発売日: 2002/06/05
  • メディア: CD



nice!(7)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

"BURLESQUE-バーレスク"(2010) [movie-b]

"シカゴ""NINE"のようなミュージカル映画はちょっと好きなので、気になっていたのと、
クリスティーナ・アギレラの歌唱力には一目置いていたので、
会社帰りに"バーレスク"を観に行く。
レディースデイということもあり、平日ながら劇場は9割方埋まり、そのうちの約9割が女性。
予想してはいたが女子率高し。

さて、タイトルの『バーレスク』の意味を恥ずかしながら知らなかったのでwikiで検索してみると…

バーレスク(英語および仏語: Burlesque)とは、 第一義的には、シェイクスピア等先行する文芸作品をパロディ化した茶番であり、 一般的には、性的な笑い(艶笑、軽い下ネタの類い)のコントや、 ヌードに至らない女性のお色気を強調した踊りを含めたショーのこと。

ふむふむ。

そんなバーレスク・ショーを売りにするLAのクラブ"バーレスク"も、
時代の流れからか経営難に陥り、ショーの伝説的スターでありオーナーであるテス(シェール)と、
舞台監督のショーン(スタンリー・トゥッチ)は立て直そうとするがうまくいかない。
Burlesque 008.jpg
テスの元夫(ピーター・ギャラガー)であり共同経営者のヴィンスがその解決策として連れてきたのが、
マーカス(エリック・デイン)というリッチなビジネスマン。
シェールは彼が気に入らず、有利な条件でクラブを買い取ろうという彼の申し出を頑なに拒んでいた。
そんな状況で現れたのが、舞台に立つことを夢見るアリ(クリスティーナ・アギレラ)。
Burlesque 001.jpg
彼女がステージに立てるようになるまでが第1のフェーズ、
このあたりもあまりに単純に物事が運びすぎる気がする。
しかしスムーズに進まないとこの映画のメイン(アギレラの舞台)に話が進まないのだからしょうがない。
行き場のない彼女を助けてくれたバーテン、ジャック( カム・ジガンデイ)のことが気になりつつも、
Burlesque 007.jpg
マーカスからのアプローチに揺れ動き、しだいにダンサーたちとも打ち解けて舞台を充実させてゆく経過が第2のフェーズ。
Burlesque 010.jpg
そしてクラブの危機をどう救うか、と言うのがラストのフェーズ。
Burlesque 002.jpg

…映画としては、正直に言うと本当に「大したことがない」としか言いようがない。
うまい脇役はいながらも、やっぱり脚本にも無理があり、設定も強引すぎるせいで、
どうしても不自然な感じがぬぐえないシーンが多い。
それでも一気に最後まで集中して観てしまえたのは、やはりステージのシーンの華やかさ、
クリスティーナ・アギレラの歌唱力、彼女自身も含めたダンサーのレベルの高さ、
あとは予定調和のストーリーを許せてしまうような(許していいのか)べたな設定、だと思う。
好き嫌いはあるだろうが、クリスティーナ・アギレラはキュートで、
ついつい目が離せなくなってしまうけれど、予想通りというか、当然のように演技はいまいち。
でもそれを帳消しにするような豪華な舞台と彼女の歌声のすごさ。
うーん、歌とダンスの力ってすごい。強引にまとめられた感じがする。
やはり彼女は歌ありき。
Burlesque 005.jpg

一つだけ残念なのは(本当はもっといっぱいツッコミどころがあるけれど)、
もともと「口パクでは物足りないから、生の歌声を聞かせたら」というアリの意見があったうえで、
さらにはアリにとって幸運なアクシデントがあり、彼女がメインのステージになるのだけれど、
そんなアリのステージも…口パクじゃん!!
シェールも、いちばんはじめにアリがバーレスクを訪れるシーンと、
中盤ちょっと強引に挿入されるリハーサルのシーンで歌うのだけれど、これも…口パクじゃん!!
あのダンスで生歌は難しいだろうし、やむをえないのだろうけれど、
もう少しなんとかできたのでは…せめて1曲目くらいは本当にマイクで歌わせるとか…
そして、個人的な感じ方だろうけれど、シェールは口パクが不自然…ちょっともったいない。

監督と、脚本次第ではシェールとクリスティーナ・アギレラをもっと生かしたいいミュージカル映画ができたのに、
と思うと残念な気持ちになるけれど、なにはともあれ、楽しめたのは確かなので☆3つ半、というところか。

個人的にこの作品で別の楽しみ方ができたのは、
結構はまったドラマシリーズの出演者が多いこと。
The O.C.のパパ役のピーター・ギャラガー。もうパパにしか見えない。
同じくThe O.C.の3,4シーズンに出演していたカム・ジガンディ。
彼は最後まで誰だか気になったのに思い出せなかった…。
そして一番驚いたのが彼女。
Burlesque 004.jpg
ヴェロニカ・マーズでキュートな高校生探偵を演じていたクリステン・ベル。
kb.jpg
ヴェロニカ役の時とは打って変わって、黒髪のセクシーレディーに。
しかもクリスティーナ・アギレラにとって代わられるスターダンサー役で、色っぽいダンスも披露。
こんなに踊れるなんてびっくり。
そして高校生役でブレイクした時すでに26だったのにもびっくり(笑)。

ミュージカル映画好きとクリスティーナ・アギレラ好きにはお勧めしますが、「映画」好きにはあまりお勧めしません。
ともあれセクシーな衣装と歌唱力と抜群のダンスは気分が上がるし、やっぱり観ていて楽しい↑↑
あの独特なルックスのシェールの存在感は健在だし、アギレラのキュートな魅力も満載。
何も考えずに観るのなら、それはそれでいい、そんな一本。

それにしてもこの衣装はすごかった(笑)。
Burlesque 011.jpg

BURLESQUE
バーレスク
2010/USA/120min

監督: スティーヴン・アンティン
製作: ドナルド・デライン
脚本: スティーヴン・アンティン
撮影: ボジャン・バゼリ
衣装デザイン: マイケル・カプラン
編集: ヴァージニア・カッツ
音楽: クリストフ・ベック
音楽監修: バック・デイモン
出演: シェール テス / クリスティーナ・アギレラ/エリック・デイン/カム・ジガンデイ
ジュリアン・ハフ/アラン・カミング アレクシス/ピーター・ギャラガー
クリステン・ベル/スタンリー・トゥッチ





映画として、観るならば、まだこちらの二作品の方がおススメ。

NINE スペシャル・エディション [DVD]

NINE スペシャル・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: 角川映画
  • メディア: DVD


シカゴ [DVD]

シカゴ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ハピネット
  • メディア: DVD



nice!(4)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

"BAGDAD CAFE"OUT OF ROSENHEIM-バグダッド・カフェ(1987) [movie-b]

東京に初雪到来。
芯から冷える寒さだけれど、雪国育ちだからか、雪が降るだけでちょっとだけうきうきする。
帰り道、ビニール傘越しに次から次へと空から落ちてくる雪を見ているだけで、心が洗われる。
それにしても本当に寒い!!!ので、早めに帰って、ワインを飲みながら、心温まる映画をDVDで。

つい最近ニュー・ディレクターズ・カット版が公開され、
劇場に観に行こう観に行こうと思いつつ…
結局行けてないので、DVDでひとり懐かしのmy favorite movie上映会。
"バグダッドカフェ-OUT OF ROSENHEIM"

CAUTION!!
**この後の文章にはストーリーの一部も記載されています。
-------------------------------------------------------------------

ラスヴェガスにほど近い、アメリカ・モハヴェ砂漠のど真ん中、
砂にまみれ、寂れ切ったモーテルで繰り広げられる人間劇。
一瞬一瞬の映像と、音楽が心に染みわたる。設定もいい。
ドイツ女ジャスミンが、異国の、しかも砂漠のど真ん中で、シュールな夫婦喧嘩を繰り広げた挙句、
荷物を持って、ひとり歩きだす。
そしてたどり着いた場所が世界の果てのような"BAGDAD CAFE"。
ここを仕切るのが、使えない亭主、ソルに愛想を尽かした黒人女、ブレンダ。
自分の子供の面倒も見ずに1日バッハばかりピアノで弾く長男ソルJr.と、
愛嬌はあるが遊んでばかりの長女フィリス、
気だるい空気の流れるカフェで曲者の客たちの相手をしながら、一日中悪態ばかり付いている彼女と、
異国からの不思議な気配をまとったジャスミンの出会い。
ジャスミンに対しても、不機嫌さを隠さないブレンダ。

そんなブレンダにジャスミンが試した魔法の数々。

1、自分の部屋を片づける
2、ブレンダのオフィスをかたづける
3、フィリスと仲良くなる
4、ソルJr.と仲良くなる
5、年老いた画家のミューズとなる
6、手品を覚える
7、手品を披露する
8、BAGDAD CAFEの人気者となる
9、BAGDAD CAFEを繁盛させる
10、ビザが切れる
11、祖国に帰る
12、戻ってくる
めでたし、めでたし。

ストーリーを羅列できるぐらい淡々とした映画だ。
この過程で少しずつ心開いていくブレンダとジャスミンの心の通い合いがすべての軸で、
そこにちょっとずつ他の登場人物とジャスミンとのかかわりが描かれる。
ブレンダは気丈なようで本当は誰かに愛され包まれたかっただけの不器用な女で、
ジャスミンは本当に愛する相手を探していたような気がする。
欠けたピースを補うように、二人は出会い、心を通わせ合った。
舞台は青い空とハイウェイ、果てしない砂漠。
何もない、ということがむしろプラスに働く不思議な場所。
不安定なアングルから映し出される世界はアメリカ人から見たアメリカではなく、
やはり異国の趣がある。
そう、アメリカにはいろんな国の地名がある。ここ、バグダッドも然り。

主人公のマリアンヌ・ゼーゲブレヒトの存在感は抜群。
ブレンダ他、モーテルの住人たちの曲者っぷりも見どころのひとつ。

外は雪が降り積もり、画面上で繰り広げられる砂漠の光景と見事な対比をなし、
なんだか一層部屋の暖かさが心地良く感じられた夜だった。

bagdadcafe.jpg

"BAGDAD CAFE"-OUT OF ROSENHEIM
バグダッド・カフェ
1987/West Germany/104min

監督: パーシー・アドロン
製作: パーシー・アドロン/エレオノール・アドロン
脚本: パーシー・アドロン/エレオノール・アドロン
撮影: ベルント・ハインル
音楽: ボブ・テルソン
主題歌: ジェヴェッタ・スティール 『コーリング・ユー』
出演: マリアンネ・ゼーゲブレヒト/ジャック・パランス/CCH・パウンダー ブレンダ
クリスティーネ・カウフマン/モニカ・カルフーン/ダロン・フラッグ

挿入歌、"Calling You" Jevetta Steeleの歌声も忘れ難い。


大団円の一曲。


バグダッド・カフェ 完全版 [DVD]

バグダッド・カフェ 完全版 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • メディア: DVD



"BROKEBACK MOUNTAIN"-ブロークバックマウンテン(2005) [movie-b]

昔、カナダに遊びに行った友人からもらった絵葉書がある。
真っ青な空を背にそそり立つ白い山脈、手前には整然と美しい森と湖。
その絵葉書を思い起こさせる光景がスクリーン一杯に広がる。
アメリカ・ワイオミング州・ブロークバックマウンテン。
そんな自然の只中で出会ったふたりの物語。

オープニングは風が強く、タンブルウィードの転がる閑散とした場所、
夏の仕事を得るために訪れたトレーラーの前でふたりは出会う。
無口なイニスと天真爛漫なジャック。
車のサイドミラー越しにイニスを意識するジャックに、その後の展開の欠片が見える。
無事に仕事を得てふたりは羊の放牧のため山に入る。
厳しいキャンプ生活を通して少しずつ打ち解けてゆくうち、二人の好意は次第に深まり、
本当にお互いを必要としあうのに、さほど時間はかからなかった。
けれどそのあとは想像に難くない葛藤、
そして周囲の目、互いの心を計りかねてのすれ違い。
純粋な愛情の迸りが濃やかに描かれる。
ワイオミングは別名"COWBOY STATE"と言われるほどの州で、
牧場が多く、人種構成はそのほとんどが白人。
『保守的』で、異質なものへの拒否反応は激しく、
よく言えば古き良きアメリカ、悪く言えば差別的アメリカなのだ。
そんな場所は、男ふたりが真の愛を全うするには、あまりに厳しすぎた。

彼らがワイオミングなどで出会わず、
彼らがニューヨーカーで、
彼らがカウボーイでなく、
彼らが例えばアーティストだったりしたとしたら。

…そうしたらこんな映画は生まれなかっただけの話だけれど。

主演のふたりが本当にいい。
オーストラリア人のヒース・レジャーは無骨なカウボーイというキャラクターにぴったり。
ジャックの両親やふたりをとりまく人々もうまい。
アカデミー賞を獲った獲らないなど別にどうでもいいのだけれど、
作品賞以外を総なめしたのも理解できる。
そして様々な媒体で憶測されていたけれど、作品賞だけ受賞できなかった理由も。

世の中には様々な恋愛映画があるけれど、
久しぶりに、愛情という無形の、でもかけがえのないものを深く感じられる映画だった。
けれど、女の私には、この映画の中のふたりの心の機微を、
100%理解することはできないだろう。
観たあとしばらく複雑な気持ちと、温かい気持ちで満たされた。


brokebackmountain01.jpgbrokebackmountain02.jpgbrokebackmountain03.jpg

"BROKEBACK MOUNTAIN"
ブロークバック・マウンテン
2005/アメリカ/2h14min

監督:アン・リー
原作:アニー・プルー
脚本:ラリー・マクマートリー
撮影:ロドリゴ・プリエト
音楽:グスターボ・サンタオラヤ 
出演:ヒース・レジャー/ジェイク・ギレンホール/ミシェル・ウィリアムズ/アン・ハサウェイ
ランディ・クエイド/リンダ・カーデリーニ/アンナ・ファリス


ブロークバック・マウンテン プレミアム・エディション [DVD]

ブロークバック・マウンテン プレミアム・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



ブロークバック・マウンテン [DVD]

ブロークバック・マウンテン [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。