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田口ランディ "根をもつこと、翼をもつこと" [BOOK]

普段、本のレビューは主にBooklogでしているのだけれど、
今日という日(日付は変わったけれど)に読んだこの本(あと2章ほど残しているけれど)の意味が、
自分にとってすごく大きいものになるような気がして、
こんな時間ですが、レビューを書いてみます。

2001年初版の、田口ランディ「根をもつこと、翼をもつこと」
元々好きな作家だったのと、ふと余った時間に立ち寄った古本屋で格安で見つけたので、購入。

この本は、ふたつの意味で私に響いた。
元々好きな作家だし、暇つぶしになれば程度の興味で手に取った作品。
それがこんなに自分に響いてくるとは。
それには二つの理由があると思う。

ひとつはいまだ終息しない福島原発問題にからんで。
「被爆のマリア」というタイトルの小説を発表している彼女だけあって、
原爆、広島への言及は時折目にしていた。
この作品でも広島や、東海村の原発事故を題材にした章があり、
10年を経て震災による原発問題を抱えた私たちが「ん??」と思うようなことが書いてある。
TV局との広島への取材で彼女が感じたことや、被爆者や、専門家から見聞きし、彼女が感じたりしたこと。
彼女が聞いた言葉。
「中性子は人間を遺伝子レベルで破壊するんですよ」
「核が恐ろしいのは生命連鎖を破壊するから」
震災時に秩序立った行動をし、他人を思いやると言われ各国から称賛された「日本人」。
しかし現実に対する理解や危機感が希薄なのも事実。
途中の章にも東海村の臨界事故でのCNNの対応と、日本のメディアの悠長な構え方の比較がなされている。
冷静な判断さえできれば、ちょっとした気付きで、どれほどの人が救えるか。
この著作では、こうした気付きを怠る日本についての批判、
環境問題に対するひとりの母親として、一市民としての真摯な姿勢が感じられる。

もうひとつは、
田口ランディが、いかに生き、いかに今の人生に至ったかを率直に表している文章。
自分自身びっくりするほどの共感を感じ、すべて読み終わるまで一睡もできない気分になっている。
彼女が文章を書くようになったわけ、そしてそこに至るまでどのように人生をたどってきたかについて。
あるがままの自分を受け入れたうえで、どう生きてきたか。
彼女のエキセントリックさの一因はその生い立ちや家族環境にもあるだろうけれど、
彼女の率直さは私にとって憧れに近く、一方その姿勢を得るために彼女がしてきたであろう努力を思うと、
それは並大抵ではなかったろうと想像がつくから、それは今の私にとってものすごい励ましだった。

今なぜこんなに彼女の文章が心に響くか、というのにはひとつ大きな理由がある。

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なかなかいままでBlogには書けずじまいでしたが、来週大阪に転勤になります。
震災直後にこの辞令を受け、ここに至るまで色々な葛藤とあがきがありました。
今日、いまの会社から離れるために受けた最終面接が失敗に終わりました。
なので、残念ながら、いったん大阪への転勤を受け入れることになります。
大阪に行くこと自体に対しては実はさほどネガティブな想いはありません。
今まで関東か東北、北海道にしか住んだことがなく、関西に住むのもいい経験と思えたから。

なぜ転勤が嫌なのか、は、色々理由があるのですが、
大きな理由はただ一つ。

「この会社では自分が死んでしまう」

これだけを抜くと、私というあさはかでどうしようもない人間が、
ただわがまま言っているだけと見えますが、この事実を骨の髄まで理解しているのも自分なら、
ここから抜け出せなければ未来がないと思ってるのも自分。
色々複合的な理由があって、大阪への転勤を受け入れざるをえない状況で、
今これからどう生きて行くか、本当に正念場だと思っているし、
自分の生き方を考えること、
本当にどう生きていきたいかを考えることは絶対に必要だと思っています。

そんな状況で田口ランディという作家のこの文章に出会えたことは、
私にとってすごくプラスになるんじゃないかなと思えました。

同じく今の私の心に響いているのは、
"インビクタス-負けざる者"という映画で、南アフリカのネルソン・マンデラが獄中愛読したという詩の一節。

"I am the master of my fate.
I am the captain of my soul."

「私は、我が運命の支配者、我が魂の指揮官」

全文をひいてみます。

Out of the night that covers me,
Black as the pit from pole to pole,
I thank whatever gods may be
For my unconquerable soul.

In the fell clutch of circumstance
I have not winced nor cried aloud.
Under the bludgeonings of chance
My head is bloody, but unbowed.

Beyond this place of wrath and tears
Looms but the Horror of the shade,
And yet the menace of the years
Finds and shall find me unafraid.

It matters not how strait the gate,
How charged with punishments the scroll,
I am the master of my fate:
I am the captain of my soul.

先日受けた占いでは、これからの運勢はきっと良くなると言われました。
いままでのことや恋愛の仕方も含め色々当てられました。
そのうえで、今までがものすごく悪い低迷期で、誕生月である5月からようやく上向いて、
11月くらいにようやくゼロに戻り、
仕事はこれから10年間いい時期に入る。自由にやんなさい、と言われました。
いい人にも出会えるし、結婚もするし、子供も産むだろう。
いまだまったく結婚願望がないのに、その占い師には、
あなた自身が結婚したいと思ってるんでしょうね、と言われました。
(ちなみに相手は勤め人で結婚したら都内に住むらしい)
いいことばかり言われて少し不安になるくらいでした。
ただし転勤で大阪事務所に一緒に行く人を占ってもらったら、
最低な人たちですね、その人たちからは巧く離れなさいと言われました。
会社は利用すればいい、と。
あまりに小気味よく彼らをこき下ろすので、笑ってしまいました。
ただし占いは占い、もちろんどうしていくかは自分だと思っています。

この占いも含め、ここ最近起こったことや自分の心の在り方を見つめたときに、
本当にいろんな意味で今が正念場なのだな、と思えました。

どう生きるかは自分次第。
これからどう生きていくか、自問自答しながら生きていこう、と思います。

とりあえずはずっと保留にしていた引っ越し準備。
一気にやらなくてはいけないので、ちょっと大変かも(笑)


根をもつこと、翼をもつこと

根をもつこと、翼をもつこと

  • 作者: 田口 ランディ
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2001/11/01
  • メディア: 単行本


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太郎さんとケンメイさん [BOOK]

初めての経験。

…っていうと大げさだけれど、この歳になるとなかなか新しいことを経験することがなくなってきたりします。
「私、このままでいいのかな」
って漠然とずっと思っていたり、将来の自分をうまく描けないことに気づいたりする。
人に誇れるような目標もなく、
でもなんとなく色んなことをうやむやにしたくなくて、最近のマンネリ、澱んだ時間を打破したくて、
だからなのか、いままで読みもしなかったような本をよく読むようになりました。
この間も下北沢のヴィレッジバンガードを物色していて見つけた本。

岡本太郎『自分の中に毒をもて』

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか (青春文庫)

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか (青春文庫)

  • 作者: 岡本 太郎
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 1993/08
  • メディア: 文庫


私たちの世代には「芸術は爆発だ!!」と、メディアで面白おかしく取り上げられた晩年の彼の姿が印象的だけれど、
実際にはパリ大学ソルボンヌ校にも留学経験があり、とっても理知的で繊細で、強い意志をもった人だと思います。
彼にとことんついて行った岡本敏子さんに対しても尊敬の念を感じ、二人の関係性にあこがれも感じるのだけれど、
彼のの文章には本当に周囲を鼓舞するパワーがあります。
生命力といったらいいのか。


「いま」やらなければ「いつ」やるんだ「いつか」と言っていたって決してできはしない。
「いつか」のために「いま」やることをやらなければ。


…耳が痛い言葉。
毎日、井の頭線渋谷駅の岡本太郎『明日の神話』を横目で見ながら、この言葉を思い出します。

そしてもう一冊、
ナガオカケンメイ『ナガオカケンメイの考え』

ナガオカケンメイの考え

ナガオカケンメイの考え

  • 作者: ナガオカ ケンメイ
  • 出版社/メーカー: アスペクト
  • 発売日: 2006/11/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


ナガオカケンメイの考え (新潮文庫)

ナガオカケンメイの考え (新潮文庫)

  • 作者: ナガオカ ケンメイ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 文庫


デザインとリサイクルを融合したD&DEPARTMENT PROJECTで、
カリモクのソファ、ACEのカバン、ホウトクの椅子など、
「日本のものづくり」の原点を蘇らせた、デザイナー兼社長の考える日々。
そんな彼の日記から拾われた言葉たち。


・仕事は結果がすべてという人がいるけれど、仕事は過程がすべてのような気がします。
・会社をステージの上と考える。役者はステージでは練習しない。
・名刺をもらって1週間後にそれを見て、顔が浮かばなかったらゴミ箱に捨てます。
・「始める」には「ワクワク」が、「続ける」には「責任」という楽しさがあります。
・ひとつのことをずっとやり通すと、絶対負けない何かを獲得できる。
・自分の人生を使って何かを試すこと。それが人生のようにも思うのです。


こちらにも耳が痛い言葉が山ほど。
働く人がどう働くか、それは個人の自由と言い切ってしまってもいいけれど、
集団にいる以上、集団、社会に対して仕事をするということはあたりまえのこと。
出会いと出来事を大切に生きる、一生懸命生きる、
彼が言っていることはとっぴなことではなく、しごくまっとうな意見ばかりなのだけれど、
なぜだろう、すごく目を開かされる気がしました。

私には、一生懸命さ、が足りてない気がします。
若いときにはまだ時間があるさと思っていたり、なんとなく甘えていたんですね。
いまさらながら、一生懸命にならなくちゃ、道は開けないかなという気がしました。
歳をとっても熱意と目標はあっていいと思う。


今日ちょっとした理由があって、電話で英語を話しました。
いや、おかしいな、外国の方と、英語を使って、電話で話しました。
…まあ、いいや。
たいしたことではないのだけれど、
英語を専門で勉強したわけでもなし、
留学したことがあるわけでもなし、
TOEICなんかを受験したわけでもなし。
途中からダメだこりゃ、と思いながらも、まあ、ダメならダメなりに、この経験を楽しもうかなと切り替えてみました。
相手は女性で気を使ってかスローペースで話してくれたので、
電話する前に思っていたよりはやりやすかったのだけれど、
自分が話すこと、話したいことは、なぜだかぱっと、鮮やかに言葉が出てこない。
でも、話していくうち、どうしても伝えたいこと、は自然と言葉が沸いて出てきて、
使うだろうと思って準備した単語なんかより、ずっとその方がうまく伝わったと思います。

どちらかというと今まで伝えようとしすぎて失敗したことのほうが多かったからか、
最近人と距離をとるほうが楽だと思い始めて、それを大人になることと勘違いしていたかもしれません。
やっぱり一生懸命伝えることって大事だなと思い直しました。


電話の後。
最近IKEAで買ったランプの明かりを眺めてぼんやりお酒を飲みながら、そんなことを考えました。
20100620.JPG

太郎さんの言葉たち
こちらもかなり強くて温かい言葉が並んでいます。

強く生きる言葉

強く生きる言葉

  • 作者: 岡本 太郎
  • 出版社/メーカー: イーストプレス
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: 単行本


壁を破る言葉

壁を破る言葉

  • 作者: 岡本 太郎
  • 出版社/メーカー: イーストプレス
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 単行本


太郎さんと敏子さんの愛情が溢れる1冊。

愛する言葉

愛する言葉

  • 作者: 岡本 太郎
  • 出版社/メーカー: イーストプレス
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本


太郎さんが家族とのことなどを書いた一冊。温かいです。

人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている。

人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている。

  • 作者: 岡本 太郎
  • 出版社/メーカー: イーストプレス
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 単行本



ケンメイさんの言葉
私は未読ですが…読んでみたいなと思いました。

ナガオカケンメイのやりかた

ナガオカケンメイのやりかた

  • 作者: ナガオカケンメイ
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2008/02/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


ナガオカケンメイとニッポン

ナガオカケンメイとニッポン

  • 作者: ナガオカケンメイ
  • 出版社/メーカー: 創美社
  • 発売日: 2009/11/05
  • メディア: 単行本



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