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"A SINGLE MAN-シングルマン"(2009) [movie-s]

久々のタクシー帰りで、前日の酔いも醒めぬまま、
(前の会社の先輩方と食事会。
多分ひとりでワイン1本分以上は飲んでいたはず…でも楽しかった@表参道おやっとさあ
なぜか和食にワイン。でもスペアリブ×赤は美味しかった!)
休日昼間に、二日酔いで痛む頭を無理やり働かせて英会話。
そのまま新宿に出て、友人と待ち合わせてシングルマンを観る。

二日酔いでぼけた頭に、わざと粗い映像で撮られた、60年代のある男の物語が染みわたっていく。

強烈な美意識に支えられた、峻烈なデビュー作。
トム・フォードという稀代の美的感覚の持ち主にかかれば、
映画も、その美意識をさらに強くその美学を表現する一種の手段、に見える。
ただし、ただ単に「美しい」というだけでこの作品を語るのは容易ではない。
トム・フォードは、彼のアイデンティティから嗜好まで、
すべてをさらけ出してなお襟を正して人に誇れる姿を示した、と言っても過言ではないと思わされた。
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原作はクリストファー・イシャーウッドという、自身もゲイである作家。
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『シングルマン』という題名自体がその作品の全体像を表しているかのようだ。
主人公はトム・フォード自身を投影したと思われるところが随所に見られる中年の大学教授ジョージ。
彼は最愛のパートナーを失い、8ヶ月もの間苦しんだ結果、自らも死を選ぼうとする。
そんな特別な一日を描いたのがこの作品。
オープニング、まず映像の荒さに少し戸惑い、そしてカメラの角度、俳優、
すべてが完璧な配置で描かれたシーンに目を奪われる。
美しい情景の後に、ジョージのある一日が描かれてゆく。
美しい佇まいの邸宅。あるものがあるべきところに置かれていないと気がすまないジョージの性格が垣間見える。
夢、自らが触れる物や音、すべてが引き金となって、ジョージは都度彼の最愛の人ジムとの思い出に引き込まれてゆく。
その日触れたもの、出会ったすべての人々がキーとなり、彼の世界観が投影される。
彼と対照的で家族的な隣人とその子供たち。
学校の教え子。
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街で出会ったスパニッシュの青年。
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昔愛し合った女性で、いまはよき親友のチャーリー。
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60年代のゲイの苦しさ生きづらさを垣間見せながらも、
フィルムの隅々にまで、ジョージ=トムが選ぶ、人やものに対する強烈なまでの審美眼が投影されているのが分かる。
そして俳優たちの素晴らしいこと。
ことにコリン・ファースの無言の演技、顔の表情だけで表現される切なさに心を打たれ、久しぶりに「感服」した。
ディテールの美しさに言及するときりがなくなりそうなので割愛するけれど、
トム・フォードの力に完膚なきまでに叩きのめされたと言ってもいい。
脚本は原作とだいぶ変えてあるらしいけれど、原作も読んでみたいと思わされた。
原作はどうなっているのか興味のあるところだけれど、
ラストの説明的過ぎるところだけは少しもったいなかったような気がする。

彼のコレクション自体もそうだけれど、ここまで自らの世界を体現できる凄さを持つっていうことは、
一体どういう気持ちがするのだろう。

創造と想像の完全なる形をフィルムによって見せつけられた気がした。
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A SINGLE MAN
シングルマン
2009/USA/101min

監督:トム・フォード
原作:クリストファー・イシャーウッド
脚本:トム・フォード/デヴィッド・スケアス
撮影:エドゥアルド・グラウ
衣装デザイン:アリアンヌ・フィリップス
音楽:アベル・コジェニオウスキ
出演:コリン・ファース/ジュリアン・ムーア/マシュー・グード/ニコラス・ホルト
ジョン・コルタハレナ/ジニファー・グッドウィン/テディ・シアーズ/ポール・バトラー


A Single Man (Vintage Classic)

A Single Man (Vintage Classic)

  • 作者: Christopher Isherwood
  • 出版社/メーカー: Vintage Classics
  • 発売日: 2010/02/04
  • メディア: ペーパーバック


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