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"YVES SAINT LAURENT - PIERRE BERGE, L'AMOUR FOU-イヴ・サンローラン(2010)" [movie-y]

ファッションがアートだと思ったのは、
イヴ・サンローランの軌跡を見てから、だったと思う。

彼のクリエイティビティ、ファッションにかける熱意、
精神をすり減らし、極限までファッション界に奉仕した彼の仕事ぶりと、
原点とも言うべき美術品のコレクションの数々が、
オークションにかけられる様子を描いたドキュメンタリー。
何とその競売総額は約463億円。個人の資産としては過去最高だそう。
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アパレル業界の端っこでしがなく働いている自分とはあまりにかけ離れた艶やかな別世界と思っていたけれど、
この世界の素晴らしさと同時に、この世界のむごさ、を感じた。
華やかな表舞台の裏側がいかにシビアで、いかに孤独かということを目の当たりにしたときに、
持って生まれた才能以上に必要とされる裏側の地道な努力と、
綱渡りの精神状態を乗り越えなくてはならなかった彼の苦悩が思いやられる。
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元々若くしてChristian Diorに認められ、ファッション業界に華やかに登場したイヴ・サンローラン。
Diorの死によって引き継いだブランドネーム、そしてDiorとの別離と、自らの名前を冠したブランドの立ち上げ。
そして続く彼の功績と一方で彼をさいなむ苦悩が、
当時ともに苦しんだであろう、公私ともにパートナーだったピエール・ベルジェの回想でつづられる。
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ドキュメンタリーとしての出来不出来はともかく、
ピエール・ベルジェが惚れこんだ彼と彼の作品、
イヴ・サンローランというデザイナーのファッション業界に残した功績と、
その裏側とを対比させて表現した内容は十分に見ごたえがあった。

シャイで繊細で、美しいものを愛し、とんでもない独創性を持ったデザイナー、イヴ・サンローラン。
彼の個人的な美術コレクションは彼の審美眼を裏打ちしている。
真にフランスのデザイナーらしいデザイナーだったと思う。
彼の死後、オートクチュール部門が閉鎖されたのは当然だろう。
はにかんだ彼の笑顔は、その功績に比して控えめで、好感のもてるものだった。
いまやプレタポルテのみのブランドになってしまったけれど、
彼の存在があったという事実が変わらない限り、
彼の名前を冠したブランドは忘れられることはないのでは、と感じた。
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L'AMOUR FOU
YVES SAINT LAURENT - PIERRE BERGE, L'AMOUR FOU
イヴ・サンローラン
2010/FRA/103min

監督:ピエール・トレトン
脚本:ピエール・トレトン/エヴ・ギルー
撮影:レオ・アンスタン
編集:ドミニク・オーヴレ
音楽:コム・アギアル
出演:イヴ・サン=ローラン(アーカイヴ映像)/ピエール・ベルジェ


イヴ・サンローランへの手紙

イヴ・サンローランへの手紙

  • 作者: ピエール ベルジェ
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2011/03
  • メディア: 単行本



Yves Saint Laurent“The beginning of a Legend”1936~2000

Yves Saint Laurent“The beginning of a Legend”1936~2000

  • 作者: 川島 ルミ子
  • 出版社/メーカー: アルク
  • 発売日: 2000/08
  • メディア: 大型本



イヴ・サンローラン (M´EMOIRE DE LA MODE)

イヴ・サンローラン (M´EMOIRE DE LA MODE)

  • 作者: ピエール ヴェルジェ
  • 出版社/メーカー: 光琳社出版
  • 発売日: 1997/05
  • メディア: 単行本



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"YOU'VE GOT MAIL-ユーガット・メール"(1998) [movie-y]

ようやく春らしい気候になってきて、この週末は桜も見ごろ。
家の近くに神田川が流れていて、天気がいいとウォーキングを楽しむ遊歩道があるのだけれど、
今日は天気も良かったし、都知事選投票のついでにウォーキング。
川沿いの桜が本当に奇麗で、春を満喫。
午後は友人とお茶するついでに明治神宮で桜を楽しもうかと思ったものの、
人の多さに負けて、先にお茶することに。
お茶しながらくだらない話に時間を忘れ、結局明治神宮にはたどり着けず(笑)。

さて、春だから、というわけではないですが、
私の世代の女子ならほとんどが一度は観たことがあるだろう、『ユー・ガット・メール』
往年のラブコメ女王と言っても過言ではないメグ・ライアンと、
『フィラデルフィア』、『フォレスト・ガンプ』のアカデミー連続受賞で、
一躍名優の仲間入りをしたトム・ハンクスで当時かなり話題になった作品。
軽い映画が観たくなって、Gyaoの映画メニューから何となくチョイス、で、再視聴。

当時、特に日本では、まだPCは一人に一台の時代ではなく、
今や当たり前の「出会い系」という言葉もなく、
この映画のシチュエーションは、かなり画期的だった気がしていたけれど、
今観ると、「ピー、ガガガガガー」というダイヤルアップの、
気が遠くなるようなインターネット接続音といい、
ネット上での手探りのコミュニケーションも、
何だか逆に新鮮に感じられるのがとても不思議だ。
shopgirlというハンドルネームで、NY152というハンドルネームの男性に想いを寄せるキャスリン。
彼女は母から受け継いだ児童書の専門店、"Shop around the corner"を経営している。
小さいながらも、子供たちや常連の憩いの場として機能する居心地のいいショップ。
今思うとこのショップのネーミングもセンスがある。
そんな店の近くに大型の書店が店を出すという。
そのメガストアのオーナー一族の若社長が、
shopgirlことキャスリンとネット上でいい感じになっているNY152ことジョー・フォックス。
このシチュエーションは、早々に視聴者に明かされるのだけれど、
ふたりのもどかしいやり取りと、
その一方で進むフォックス社のメガストアOPENと、"Shop around the corner"の閉店劇、
表向き、いがみ合うキャスリンとジョー、そして出会えそうで出会えないShopgirlとNY152のふたり…。
観客はふたりの行く末をやきもきしながら見守るのだけれど、その経緯の描き方がとてもうまい。
そして何よりもこの頃のメグ・ライアンの可愛らしさ!!
今流行りのアヒル口の元祖は彼女ではないかとひそかに思っているのだけれど、
この頃の彼女の人気は本当に凄かった。
異性はもちろん同性も虜にする彼女のナチュラルでボーダーレスな魅力は、他の誰にもないものだった。
好みはあると思うけれど、彼女以上にラブコメで抜群の存在感を放つ女優にはいまだ出会えていない。

また、ストーリーの要のシーンでの、ベタだけれどつぼにはまる選曲がこの映画の裏メニューとも言えるかもしれない。
個人的にはStevie Wonder "Signed, Sealed, Delivered, I'm yours"の使われ方と、The Cranberries "Dreams"がツボ。
後者は特に『恋する惑星』のフェイ・ウォンのカヴァーも然り、恋愛ものに欠かせない曲のイメージがある。
ラストの"Over the rainbow"はストーリーの盛り上がりとリンクしていて、「べたすぎる!!」と思いながらも、
自然と幸せな気持ちにさせられてしまう、そんな強さもあった。

いつまでも、こういう気持ちは忘れたくないし、近い将来、再びこういう気持ちを味わいたいものです。

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YOU'VE GOT MAIL
ユー・ガット・メール
1998/USA/119min

監督:ノーラ・エフロン
原作戯曲:ミクロス・ラズロ
脚本:ノーラ・エフロン/デリア・エフロン
オリジナル脚本:サムソン・ラファエルソン
撮影:ジョン・リンドレー
音楽:ジョージ・フェントン
出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/グレッグ・キニア/パーカー・ポージー
ジーン・ステイプルトン/スティーヴ・ザーン/ダブニー・コールマン/ジョン・ランドルフ
デイヴ・チャペル/ハリー・ハーシュ



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