"MESRINE: L'ENNEMI PUBLIC N°1-ジャック・メスリーヌ パブリック・エネミーNo.1(2008)" [movie-m]
昨年観ていたのに感想を書けていなかった作品を。
『ドーベルマン』や『オーシャンズシリーズ』など、
クライムムービーのイメージが強いヴァンサン・カッセル主演で、
フランスで“社会の敵No.1”と呼ばれた伝説のギャング、
ジャック・メスリーヌをpart1、part2と二部にわたってたっぷりと描いた作品。
私の中ではヴァンサン・カッセルといえばマチュー・カソビッツの『憎しみ』の、
坊主頭で痩身の若者のイメージや、『ドーベルマン』でのスタイリッシュなギャングのイメージが強かったけれど、
いつの間にこんなに大物感溢れる貫録たっぷりの俳優に仕上がったのだろう。
原作も、メスリーヌ自身が書いたものを使っており、
彼がアルジェリア戦争で兵役につき、初めて人を殺した若者時代から、
最後に警察に蜂の巣にされるまでの約20年あまりをヴァンサン・カッセルが演じているのだけれど、
その演じ分け、なりきりっぷり、七変化っぷりに感服させられる。
ちなみにpart1と2では体重を20kgも増減させたそう。
特に後年お腹も出て、大物ぶりを醸し出そうとするメスリーヌの態度さながらの人を食ったような演技は、
当時のメスリーヌ本人を知らない観客にも彼の存在を感じさせるような、そんな演技だったと思う。
part1では戦争という環境で初めての殺人を犯し、
兵役後に裏稼業に手を染めてゆく姿が描かれている。
そんな彼を、実の息子とも思える懐の深さで迎えるギャングのボス、ギドにジェラール・ドパルデュー。
こちらも大御所っぷりが板についているけれど、やはり存在感のある俳優だなと思う。
また、スピード感のある展開、60、70年代当時のファッションや風俗も一見の価値あり。
メスリーヌを取り巻く女たちも、ひと癖ふた癖あるキャラクターが魅力的。
メスリーヌの犯罪を自ら手伝うジャンヌは、積極的で芯のある雰囲気が素敵。
それ以外にも、結婚して子供も儲けた相手や娼婦など女には事欠かなかったらしいメスリーヌだけれど、
いちばん最後に連れ添ったシルヴィア役に小悪魔的なリュディヴィーヌ・サニエ。
彼女もしたたかなギャングの情婦役にはまっていたと思う。
劇中、彼女にあれこれ買い与えるメスリーヌの様子が出てきていたが、
当時のファッションに身を包む彼女を観るのもこの作品の楽しみの一つに数えられるだろう。
とりあえず義賊的にもてはやされていたメスリーヌだけれど、この作品では特に英雄視せず、
ありのままの等身大の彼をしっかり描くことに重きを置いていたと思う。
等身大の犯罪者。
確かに、とっさの機転で立ち回り、軽やかに、そして大胆に犯罪を犯していく彼を観るスリル、
それは善悪を超えた一種のエンターテイメントに見える。
その一方で、残忍な殺人を犯す際の異常と言える衝動や容赦なさ、
収監後の劣悪な環境での個をはく奪された彼の弱さと同時に垣間見えるしたたかさ、
自分を大きく見せたいと願ってか大物ぶり、執拗なまでに仲間や周囲の人間へのアピールを続ける彼など、
等身大を通り越してときに眉をひそめたくなるような様子も逐一描かれている。
それがための二部構成だったろうし、テンポよく描いてなおこのボリュームになったのだろう。
単なるエンタテイメントではなく、生々しい犯罪者の記録、と言っても過言ではない仕上がりは、
同じ『パブリック・エネミー』のタイトルのついたJ・デップの作品とは一線を画す、
フランスらしいクライム・ムービーになっていると思う。
メスリーヌになりきったヴァンサン・カッセルに拍手。
さて、ヴァンサンは逃走中のメスリーヌに合わせてその髪形や姿かたちをしょっちゅう変えているのだけれど、
そんなメスリーヌの実際の変装写真がこちら。
いかにもしたたかな犯罪者の素顔が垣間見える一枚。
MESRINE: L'INSTINCT DE MORT
"ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 1 ノワール編"
2008/FRA/2008
監督:ジャン=フランソワ・リシェ
製作:トマ・ラングマン
原作:ジャック・メスリーヌ
脚本:アブデル・ラウフ・ダブリ/ジャン=フランソワ・リシェ
撮影:ロバート・ギャンツ
衣装:ヴィルジニー・モンテル
出演:ヴァンサン・カッセル/セシル・ドゥ・フランス/ジェラール・ドパルデュー/エレナ・アナヤ
ロイ・デュプイ/ジル・ルルーシュ/ミシェル・デュショー/ミリアム・ボワイエ
MESRINE: L'ENNEMI PUBLIC N°1
"ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 2 ルージュ編"
2008/FRA/132min
監督:ジャン=フランソワ・リシェ
製作:トマ・ラングマン
原作:ジャック・メスリーヌ
脚本:アブデル・ラウフ・ダブリ/ジャン=フランソワ・リシェ
撮影:ロバート・ギャンツ
衣装:ヴィルジニー・モンテル
出演:ヴァンサン・カッセル/リュディヴィーヌ・サニエ/マチュー・アマルリック
オリヴィエ・グルメ/ジェラール・ランヴァン/サミュエル・ル・ビアン/ミシェル・デュショーソワ
もう一度観たいマチュー・カソビッツの『憎しみ』
DVD出ていないのかと思っていたら、以前発売されていたようです…。
『ドーベルマン』や『オーシャンズシリーズ』など、
クライムムービーのイメージが強いヴァンサン・カッセル主演で、
フランスで“社会の敵No.1”と呼ばれた伝説のギャング、
ジャック・メスリーヌをpart1、part2と二部にわたってたっぷりと描いた作品。
私の中ではヴァンサン・カッセルといえばマチュー・カソビッツの『憎しみ』の、
坊主頭で痩身の若者のイメージや、『ドーベルマン』でのスタイリッシュなギャングのイメージが強かったけれど、
いつの間にこんなに大物感溢れる貫録たっぷりの俳優に仕上がったのだろう。
原作も、メスリーヌ自身が書いたものを使っており、
彼がアルジェリア戦争で兵役につき、初めて人を殺した若者時代から、
最後に警察に蜂の巣にされるまでの約20年あまりをヴァンサン・カッセルが演じているのだけれど、
その演じ分け、なりきりっぷり、七変化っぷりに感服させられる。
ちなみにpart1と2では体重を20kgも増減させたそう。
特に後年お腹も出て、大物ぶりを醸し出そうとするメスリーヌの態度さながらの人を食ったような演技は、
当時のメスリーヌ本人を知らない観客にも彼の存在を感じさせるような、そんな演技だったと思う。
part1では戦争という環境で初めての殺人を犯し、
兵役後に裏稼業に手を染めてゆく姿が描かれている。
そんな彼を、実の息子とも思える懐の深さで迎えるギャングのボス、ギドにジェラール・ドパルデュー。
こちらも大御所っぷりが板についているけれど、やはり存在感のある俳優だなと思う。
また、スピード感のある展開、60、70年代当時のファッションや風俗も一見の価値あり。
メスリーヌを取り巻く女たちも、ひと癖ふた癖あるキャラクターが魅力的。
メスリーヌの犯罪を自ら手伝うジャンヌは、積極的で芯のある雰囲気が素敵。
それ以外にも、結婚して子供も儲けた相手や娼婦など女には事欠かなかったらしいメスリーヌだけれど、
いちばん最後に連れ添ったシルヴィア役に小悪魔的なリュディヴィーヌ・サニエ。
彼女もしたたかなギャングの情婦役にはまっていたと思う。
劇中、彼女にあれこれ買い与えるメスリーヌの様子が出てきていたが、
当時のファッションに身を包む彼女を観るのもこの作品の楽しみの一つに数えられるだろう。
とりあえず義賊的にもてはやされていたメスリーヌだけれど、この作品では特に英雄視せず、
ありのままの等身大の彼をしっかり描くことに重きを置いていたと思う。
等身大の犯罪者。
確かに、とっさの機転で立ち回り、軽やかに、そして大胆に犯罪を犯していく彼を観るスリル、
それは善悪を超えた一種のエンターテイメントに見える。
その一方で、残忍な殺人を犯す際の異常と言える衝動や容赦なさ、
収監後の劣悪な環境での個をはく奪された彼の弱さと同時に垣間見えるしたたかさ、
自分を大きく見せたいと願ってか大物ぶり、執拗なまでに仲間や周囲の人間へのアピールを続ける彼など、
等身大を通り越してときに眉をひそめたくなるような様子も逐一描かれている。
それがための二部構成だったろうし、テンポよく描いてなおこのボリュームになったのだろう。
単なるエンタテイメントではなく、生々しい犯罪者の記録、と言っても過言ではない仕上がりは、
同じ『パブリック・エネミー』のタイトルのついたJ・デップの作品とは一線を画す、
フランスらしいクライム・ムービーになっていると思う。
メスリーヌになりきったヴァンサン・カッセルに拍手。
さて、ヴァンサンは逃走中のメスリーヌに合わせてその髪形や姿かたちをしょっちゅう変えているのだけれど、
そんなメスリーヌの実際の変装写真がこちら。
いかにもしたたかな犯罪者の素顔が垣間見える一枚。
MESRINE: L'INSTINCT DE MORT
"ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 1 ノワール編"
2008/FRA/2008
監督:ジャン=フランソワ・リシェ
製作:トマ・ラングマン
原作:ジャック・メスリーヌ
脚本:アブデル・ラウフ・ダブリ/ジャン=フランソワ・リシェ
撮影:ロバート・ギャンツ
衣装:ヴィルジニー・モンテル
出演:ヴァンサン・カッセル/セシル・ドゥ・フランス/ジェラール・ドパルデュー/エレナ・アナヤ
ロイ・デュプイ/ジル・ルルーシュ/ミシェル・デュショー/ミリアム・ボワイエ
ジャック・メスリーヌ / パブリック・エネミーNo.1 Part.1 [DVD]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- メディア: DVD
MESRINE: L'ENNEMI PUBLIC N°1
"ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 2 ルージュ編"
2008/FRA/132min
監督:ジャン=フランソワ・リシェ
製作:トマ・ラングマン
原作:ジャック・メスリーヌ
脚本:アブデル・ラウフ・ダブリ/ジャン=フランソワ・リシェ
撮影:ロバート・ギャンツ
衣装:ヴィルジニー・モンテル
出演:ヴァンサン・カッセル/リュディヴィーヌ・サニエ/マチュー・アマルリック
オリヴィエ・グルメ/ジェラール・ランヴァン/サミュエル・ル・ビアン/ミシェル・デュショーソワ
ジャック・メスリーヌ / パブリック・エネミーNo.1 Part2 [DVD]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- メディア: DVD
もう一度観たいマチュー・カソビッツの『憎しみ』
DVD出ていないのかと思っていたら、以前発売されていたようです…。
この作品は映画館で観たものの、一部眠ってしまったので
また観たいと思っていた作品でした。
ちょうどWOWOWで放送されたのを録画したので、
近々ゆっくり見直す予定です。
ヴァンサン・カッセルって細いイメージが強いので、
役作りであそこまで体重を増やしたのは本当に驚きました。
あと、フランスの名優がたくさん出てくるのも見どころですね。
by figaro (2011-01-06 22:54)
WOWOW入ってるんですね!
羨ましい…
ヴァンサン・カッセルの七変化、多彩な共演陣も魅力的な作品ですよね。
ご自宅でじっくり楽しんで下さい♪
by movielover (2011-01-07 12:46)