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"THE DREAMERS-ドリーマーズ(2003)" [movie-d]

ベルナルド・ベルトルッチの作りだす映像を美しいと思わない者の人生は、
ちょっとだけ、損をしていると思う。
もちろん彼の映像を必要としない人生もあるだろうし、それはそれで実り多い人生かもしれない。
彼の作り出す作品は時に賛否両論を生み出す。
正直に言うと、私も彼の作品に対する好き嫌いははっきりと分かれる。
ある作品はすごく好きになるのに、ある作品は取り立てて好きになれない。
彼はヌーヴェルバーグの面々を尊敬し、イタリア人らしからぬイタリア人の映画監督として、
独特の世界を作り上げてきた。
『ラストタンゴ・イン・パリ』のエロティックな孤独と絶望。
『ラスト・エンペラー』の圧倒的存在感。
『シャンドライの恋』のひたむきな美。
この『ドリーマーズ』は、『ラスト・エンペラー』以降受賞歴もなく、
ハリウッド資本で自分の趣味に合う映画だけ撮り続けている印象のある彼の、
今現在のところいちばん最近の作品。

68年の5月革命に揺れるパリが舞台。
創設者のアンリ・ラングロワの解雇に抗議するため集ったシネマテーク・フランセーズで、
双子の姉弟とアメリカ人留学生が出会う。
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姉のイザベルはすぐに留学生マシューに興味を持ち、弟を絡めた奇妙な三角関係がスタート。
親が長期不在になるのをいいことに、マシューを彼らのアパルトマンに呼び寄せるふたり。
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当時のパリの雰囲気、若者たちの風俗を描いている点でとても興味深い。
映画、という愛すべきものに対する若者たちの興味は尽きず、
この映画の中ではその貪欲さがそのまま性的な興味にシンクロする。
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彼らが観ていた映画、彼らが聞いていた音楽、
それらに関する興味と屈折した愛情が作り出す異常な光景。
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ベルトルッチの世界観というか、趣味がそのまま出ている映画だと思う。
美しいけれど、いままでの作品と比較して少し物足りない気がしてしまうのは、
登場人物と設定のせいだけだろうか??
ディテールへのこだわりを感じさせる数々のカットは美しかったし、
マイケル・ピット、エヴァ・グリーン、ルイ・ガレルも若者独特のナイーブさを表現しきっていたし、
公開されたほとんどの国でR-15指定になるような、
過激な性描写に体当たりしていたという点でも評価できると思う。
けれど個人的には、三人だけの閉塞的な関係のバランスが崩れていく瞬間の描き方がもの足らなかった。
そして特にラストの幕切れは少し締まらない感じがしてしまう。
ベルトルッチの若さに対する懐古趣味が露わになった、と言ったら言い過ぎだろうか。
五月革命の熱狂が、なんとなく架空の遊びのような他愛のないものに見えてしまったのは、
私だけではないのでは。
The Dreamers 004.jpg

色々否定的な意見ばかり書いてしまったとは言え、この作品はやはり嫌いにはなれない気がする。
これはこれで悪くはないけれど、やはり彼の過去の作品との比較に固執してしまうのは、
私が歳をとったから、とも言えるかもしれない。
The Dreamers 007.jpg

ドリーマーズ(2003)
THE DREAMERS
I SOGNATORI [伊]
2003/UK/FRA/ITA/117min

監督:ベルナルド・ベルトルッチ
製作:ジェレミー・トーマス
原作:ギルバート・アデア『ドリーマーズ』(白水社)
脚本:ギルバート・アデア
撮影:ファビオ・チャンチェッティ
出演:マイケル・ピット/エヴァ・グリーン/ルイ・ガレル/ロバン・ルヌーチ/アンナ・チャンセラー
ジャン=ピエール・カルフォン/ジャン=ピエール・レオ

ドリーマーズ 特別版 ~R-18ヴァージョン~ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • メディア: DVD


原作です

ドリーマーズ

ドリーマーズ

  • 作者: ギルバート アデア
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 単行本



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