SSブログ

"INVICTUS-インビクタス/負けざる者たち"(2009) [movie-i]

競技者と競技の愛好者を傍観者として見たとき、
ときに彼らの熱狂は滑稽に見えることもあるのに、
ある一定の分水嶺を超えたとき、傍観者もその愛好者同様、その競技にのめりこんでしまうことがある。
そう、ときに彼らの熱狂は涙さえ誘う。

南アフリカ共和国を舞台に、人種問題と政治を絡め描かれたスポーツもの。
何となく、クリント・イーストウッド監督作品の中でも少し異色な作品の気がしてしまうのは私だけだろうか。
この作品の成り立ちにはマンデラ本人が深く関わっていると聞いて驚いた。
そもそも「自伝を演じてもらうなら誰がいいか」との問いに、
モーガン・フリーマンの名をあげたことに端を発している。
フリーマンはマンデラを訪ね、映画化権を買い取り、そしてイーストウッドに監督を依頼したのだ。
こういった経緯があるから、イーストウッド監督作品の中でも毛色の違いを感じてしまうのかもしれない。

ところで、作品の鍵となるのが、27年間の投獄の後、かの国で初の黒人大統領に就任したネルソン・マンデラと、
白人に人気のあった同国のラグビーチーム、
「スプリングボクス」の主将、フランソワ・ピナールとの交流である。
マット・デイモンはラグビーの選手にしては小さすぎると感じたけれど、
内に秘めた闘志や意思の強さを表現する力は素晴らしい。
モーガン・フリーマンの存在感は言わずもがな。
当時成績が低迷していたチームを、白人と黒人の融和の象徴として存在させようとしていたマンデラと、
彼の思惑に振り回されながらも次第に理解を深め、チームをまとめていくピナールとの心の通わせ方の、絶妙な演出の仕方にはイーストウッドらしさが感じられる。
当時の白人と黒人との微妙な力関係も、この映画に影響を及ぼしている。
政権が変わったことによりおびえる白人たちの心理、
強気ながら長い圧政の影響からなかなか解放されることができない黒人たち。
そんな彼らを一つにしたのが1995年のワールドカップ。
低迷していたスプリングボクスが一転、快進撃を続けてゆくのを見守る南ア共和国民。
単純かもしれないけれど、スポーツを通してひとつになる感覚がわかりやすく、テンポよく語られる。

準優勝、勝利の杯を授けられたフランソワ・ピナールはマンデラとこう会話する。
マンデラ「諸君の貢献に心から感謝する」
ピナール「祖国を変えてくださった大統領のおかげです」
日本語で書いてしまうとすっきりしてしまうし、
この二人の会話に共通する"country"という単語は、普段使われるよりはるかに重みがあった。
祖国への愛、意識はたとえ苛酷な歴史を経た国でも、
いや、そのような国だからこそ、複雑に、強く個々の国民の根底に流れているものかもしれない。
その感情の素直な発露をスポーツを通して映画化した、爽やかな作品だと思った。
invictas 001.jpg

南アフリカが抱える問題の根っこの部分や具体的な内容はあえて語られないまでも、
マンデラの精神は存分に語られているのではないだろうか。
彼が獄中で愛読し、フランソワに送ったとされる詩のラストが、
この作品の根幹となる精神を体現しているような気がする。

"I am the master of my fate.
I am the captain of my soul."

invictus 002.jpg

INVICTUS
インビクタス/負けざる者たち
2009/USA/134min

監督:クリント・イーストウッド
製作総指揮:モーガン・フリーマン/ティム・ムーア
原作:ジョン・カーリン
音楽:カイル・イーストウッド/マイケル・スティーヴンス
出演:モーガン・フリーマン/マット・デイモン/トニー・キゴロギ/パトリック・モフォケン


インビクタス / 負けざる者たち [DVD]

インビクタス / 負けざる者たち [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


インビクタス / 負けざる者たち Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)

インビクタス / 負けざる者たち Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: Blu-ray



nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 2

コメント 4

cjlewis

この映画、観てません。観たくなりました。
マット・デイモンは、好きな役者の一人ですし。。。

↓ホワイト餃子の本店は、野田です。
http://www.white-gyouza.co.jp/

by cjlewis (2011-05-24 21:51) 

movielover

>>cjlewisさん

コメントありがとうございました!!
いい映画だと思います。

ホワイト餃子、野田なんですね。
美味しそうなんで、地元帰った時にでも行ってみたいと思います♪
by movielover (2011-06-01 15:29) 

ken

遅ればせながら、こちらにも。
これは「言葉」を堪能する映画でもあるわけですから、
字幕版と吹き替え版、両方観るといいかも知れませんね。
ラグビーに明るくなかったからこそ、この大会の結果を知らず、
ドキドキしながら観られたのもラッキーでした。
by ken (2011-06-26 22:50) 

movielover

>>kenさん

確かにそうですね!!
字幕と吹き替え、両方堪能するのもありかもしれません。

試合の結果がどちらに転ぼうと、いい映画になったとは思います。
いつもnice!! ありがとうございます。
by movielover (2011-07-03 03:07) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

GREENROOM FESTIVAL 2.."YVES SAINT LAURENT .. ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。