"BANLIEUE 13-アルティメット"(2004) [movie-a]
私がこの手の作品を進んで観ることはほとんどない。
しかもリュック・ベッソン絡み。
その昔、『グラン・ブルー』や『ニキータ』をきっかけに、映画の世界へのめりこんだ私にとって、
リュック・ベッソン絡みの近年の作品は、手を出すのにちょっとしたためらいを感じてしまう。
けれど、何となく何も考えたくない日々が続いていて、Gyaoの無料視聴可能なラインナップの中からチョイス。
2004年当時近未来として設定された2010年。
パリ郊外の"バンリュー13"は、警察の力も及ばず、学校も、公共施設も機能しないほどに荒廃していた。
そんなシチュエーションの舞台となるバンリューとは、アメリカで言えばいわばゲットー。
その昔、旅慣れない学生だった頃、格安ツアーで初めて行ったパリで泊まった3つ星ホテルが、
バンリューと呼ばれる郊外にあった。
思い描いていたパリの姿とまったく違う雰囲気に戸惑ったことは今も忘れない。
ぱっとしない団地が立ち並ぶ寂れた地域で、お店と言えばバス停の近くにちょっとした商店があるくらい。
すれ違う人々はアラブ系やアフリカ系が多く、
なんだか、異国に来た上に、とんでもない地域に来てしまったと思い、
夜、パリの市中から宿に戻るときは何だかびくびくしていた。
なので、そんなバンリューが無法地帯と化すという状況は、なんだかすんなりと理解ができた。
さて、バンリュー13地区で生まれ育ち、自らの肉体で地区の秩序を守るため、日々麻薬の売人タハに立ち向かうレイト。
そのレイトはある衝突をきっかけに、自分の妹ローラをタハに奪われてしまった上に、
自分は刑務所に収監されてしまう。
このレイト演じるダヴィッド・ベルの肉体技がすごい。
彼が行うのはパルクール(Parkour,PK)というフランス発祥の運動方法。
周囲にある環境を利用しながら「走る」「登る」「跳ぶ」などの基本動作だけで凄技を見せてくれる。
ビルの壁、段差、階段、手すり、ドア、すべてを利用して巧みに追手をかわすベルの技は、
「目が離せない」「目が釘付けになる」という慣用句を自然と思い起こさせる。
これってCGじゃないの??と思うような場面が随所にある。
けれど、このパルクール、人間の本来あるべき姿、たとえば森林に住む野生の猿なら、
当たり前の動きなんじゃないかなとも思わされる。
ちなみにこのパルクールの元になるMéthode Naturelle(メソッド・ナチュレル)とは、直訳すると、「自然法」と言う意味。
さて、一方、緻密な工作と巧みな武術で優秀な検挙率を誇るエリート捜査官ダミアン(シリル・ラファエル)。
ダミアンは上層部からバンリュー13地区に持ち込まれたミサイルの解除を命じられ、
収監中のレイトの助けを得てバンリュー13地区に乗り込むこととなる。
さて、その顛末はいかに。
ラストの展開はいかにもアクション映画、とはいえ、落ちにはフランス人らしいエスプリも感じられた。
もしかしてフランス人ならバンリューとフランス政府を巡る位置関係や、
バンリューの犯罪事情にもう少し何らかの感慨をもつかもしれないけれど、
私から観たこの映画のメインの主題は格闘とパルクールを含む彼らの動きに尽きる。
キャラクター設定の単純さや、若干展開の稚拙さは否めないけれど、とにかく爽快だった。
そう言えばリュック・ベッソンの格闘技好き、なかでもブルース・リー好きはかなり有名らしい。
彼にとって、映画へのプリミティブな想いとは、
子供時代に観たアクション映画の延長線上にあるものなのかもしれない。
BANLIEUE 13
アルティメット
2004/FRA/85min
監督:ピエール・モレル
製作:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン/ビビ・ナセリ
撮影:マヌエル・テラン
出演:シリル・ラファエリ/ダヴィッド・ベル/トニー・ダマリオ/ラルビ・ナセリ/ダニー・ヴェリッシモ
しかもリュック・ベッソン絡み。
その昔、『グラン・ブルー』や『ニキータ』をきっかけに、映画の世界へのめりこんだ私にとって、
リュック・ベッソン絡みの近年の作品は、手を出すのにちょっとしたためらいを感じてしまう。
けれど、何となく何も考えたくない日々が続いていて、Gyaoの無料視聴可能なラインナップの中からチョイス。
2004年当時近未来として設定された2010年。
パリ郊外の"バンリュー13"は、警察の力も及ばず、学校も、公共施設も機能しないほどに荒廃していた。
そんなシチュエーションの舞台となるバンリューとは、アメリカで言えばいわばゲットー。
その昔、旅慣れない学生だった頃、格安ツアーで初めて行ったパリで泊まった3つ星ホテルが、
バンリューと呼ばれる郊外にあった。
思い描いていたパリの姿とまったく違う雰囲気に戸惑ったことは今も忘れない。
ぱっとしない団地が立ち並ぶ寂れた地域で、お店と言えばバス停の近くにちょっとした商店があるくらい。
すれ違う人々はアラブ系やアフリカ系が多く、
なんだか、異国に来た上に、とんでもない地域に来てしまったと思い、
夜、パリの市中から宿に戻るときは何だかびくびくしていた。
なので、そんなバンリューが無法地帯と化すという状況は、なんだかすんなりと理解ができた。
さて、バンリュー13地区で生まれ育ち、自らの肉体で地区の秩序を守るため、日々麻薬の売人タハに立ち向かうレイト。
そのレイトはある衝突をきっかけに、自分の妹ローラをタハに奪われてしまった上に、
自分は刑務所に収監されてしまう。
このレイト演じるダヴィッド・ベルの肉体技がすごい。
彼が行うのはパルクール(Parkour,PK)というフランス発祥の運動方法。
周囲にある環境を利用しながら「走る」「登る」「跳ぶ」などの基本動作だけで凄技を見せてくれる。
ビルの壁、段差、階段、手すり、ドア、すべてを利用して巧みに追手をかわすベルの技は、
「目が離せない」「目が釘付けになる」という慣用句を自然と思い起こさせる。
これってCGじゃないの??と思うような場面が随所にある。
けれど、このパルクール、人間の本来あるべき姿、たとえば森林に住む野生の猿なら、
当たり前の動きなんじゃないかなとも思わされる。
ちなみにこのパルクールの元になるMéthode Naturelle(メソッド・ナチュレル)とは、直訳すると、「自然法」と言う意味。
さて、一方、緻密な工作と巧みな武術で優秀な検挙率を誇るエリート捜査官ダミアン(シリル・ラファエル)。
ダミアンは上層部からバンリュー13地区に持ち込まれたミサイルの解除を命じられ、
収監中のレイトの助けを得てバンリュー13地区に乗り込むこととなる。
さて、その顛末はいかに。
ラストの展開はいかにもアクション映画、とはいえ、落ちにはフランス人らしいエスプリも感じられた。
もしかしてフランス人ならバンリューとフランス政府を巡る位置関係や、
バンリューの犯罪事情にもう少し何らかの感慨をもつかもしれないけれど、
私から観たこの映画のメインの主題は格闘とパルクールを含む彼らの動きに尽きる。
キャラクター設定の単純さや、若干展開の稚拙さは否めないけれど、とにかく爽快だった。
そう言えばリュック・ベッソンの格闘技好き、なかでもブルース・リー好きはかなり有名らしい。
彼にとって、映画へのプリミティブな想いとは、
子供時代に観たアクション映画の延長線上にあるものなのかもしれない。
BANLIEUE 13
アルティメット
2004/FRA/85min
監督:ピエール・モレル
製作:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン/ビビ・ナセリ
撮影:マヌエル・テラン
出演:シリル・ラファエリ/ダヴィッド・ベル/トニー・ダマリオ/ラルビ・ナセリ/ダニー・ヴェリッシモ
"ANY GIVEN SUNDAY-エニイ・ギブン・サンデー"(1999) [movie-a]
骨太な社会派の監督として知られるオリヴァー・ストーン。
『ウォール街』の続編『ウォール・ストリート』の日本公開も間近に迫っているが、
私が観たことのある彼の作品は『7月4日に生まれて』と『天と地』の二作品のみで、
自身がヴェトナム戦争を体験しているということもあってか、戦争映画のイメージが強い。
そんな彼がアメリカで絶大な人気を誇る、アメフトをテーマに撮った作品。
高校時代にアメリカでホームステイをしたときに、日本人にはほとんどなじみのないアメフトが、
彼の国では熱狂的なまでに支持されるスポーツだというのを眼にして、少し驚いた記憶がある。
題名のニュアンスは…日本人はちょっとよく理解できないと思う。もちろん私も。
題名は毎週日曜にアメフトの試合があるから…というところから来ているようだけれど。
英語がわかる人でもアメリカ人でないとニュアンスはつかめないのでは(もちろん私にはさっぱり理解できない)。
主演のアル・パチーノが負けの混んでいるアメフトチームのヘッド・コーチ、
キャメロン・ディアスが父親からチームを譲り受けたオーナー、
デニス・クエイドがベテランQBでキャプテンのジャック、
ジャックや二番手の怪我で運よくスタメンをゲットし、
活躍するようになるQBビーメンにジェイミー・フォックス。
男性的すぎる監督はあまり好みではないので、
特に期待せずに観始めたのだけれど、
ふと気づいたら、スピード感あふれる展開、それぞれのキャラクターの個性に見入ってしまっていた。
いい意味でも悪い意味でも、
オリヴァー・ストーンは映画監督、という肩書が非常にしっくりくる監督だと思う。
彼の撮る映画には必ず何かがあり、それがたとえいいものでも悪いものでも、
観る者がそれを好きだろうが嫌いだろうが、
周囲が納得せざるをえないような力のある映画作りをしている印象がある。
やはり彼の作品には『骨太』という表現がしっくりくる。
ただし、ただ骨太で荒っぽいだけではなく、それぞれの出演者の心の機微まで表現する繊細さもある。
いいセリフも多い。
終盤、プレーオフの試合のブレイクにトニーが選手に対して熱く語りかけるシーンは見ごたえがあった。
テーマも内容も基本的に女性が楽しめるようなものではないけれど、
多少なりと引き込まれてしまうような強さがあった。
キャメロン・ディアスの役どころも、最近の彼女にはないキャラクターで、悪くない。
基本的には人間関係を描いているからか、アメフトをほとんど知らない私でも楽しめた作品だった。
ラスト、アル・パチーノの演じるトニーの鮮やかで爽やかな転身も清々しい。
最終的には、不器用なのがカッコいい、スマートであることはカッコ悪い、とすら思わされた。
アメリカ人ならさらに楽しめる映画だったのかも。
ANY GIVEN SUNDAY
エニイ・ギブン・サンデー
1999/USA/164min
監督:オリヴァー・ストーン
原案:ダニエル・パイン/ジョン・ローガン
脚本:ジョン・ローガン/オリヴァー・ストーン
撮影:サルヴァトーレ・トチノ
音楽:ロビー・ロバートソン/ポール・ケリー /リチャード・ホロウィッツ
出演:アル・パチーノ/キャメロン・ディアス/デニス・クエイド
ジェームズ・ウッズ/ジェイミー・フォックス/LL・クール・J/マシュー・モディーン
ジム・ブラウン/ローレンス・テイラー/チャールトン・ヘストン/アン=マーグレット
『ウォール街』の続編『ウォール・ストリート』の日本公開も間近に迫っているが、
私が観たことのある彼の作品は『7月4日に生まれて』と『天と地』の二作品のみで、
自身がヴェトナム戦争を体験しているということもあってか、戦争映画のイメージが強い。
そんな彼がアメリカで絶大な人気を誇る、アメフトをテーマに撮った作品。
高校時代にアメリカでホームステイをしたときに、日本人にはほとんどなじみのないアメフトが、
彼の国では熱狂的なまでに支持されるスポーツだというのを眼にして、少し驚いた記憶がある。
題名のニュアンスは…日本人はちょっとよく理解できないと思う。もちろん私も。
題名は毎週日曜にアメフトの試合があるから…というところから来ているようだけれど。
英語がわかる人でもアメリカ人でないとニュアンスはつかめないのでは(もちろん私にはさっぱり理解できない)。
主演のアル・パチーノが負けの混んでいるアメフトチームのヘッド・コーチ、
キャメロン・ディアスが父親からチームを譲り受けたオーナー、
デニス・クエイドがベテランQBでキャプテンのジャック、
ジャックや二番手の怪我で運よくスタメンをゲットし、
活躍するようになるQBビーメンにジェイミー・フォックス。
男性的すぎる監督はあまり好みではないので、
特に期待せずに観始めたのだけれど、
ふと気づいたら、スピード感あふれる展開、それぞれのキャラクターの個性に見入ってしまっていた。
いい意味でも悪い意味でも、
オリヴァー・ストーンは映画監督、という肩書が非常にしっくりくる監督だと思う。
彼の撮る映画には必ず何かがあり、それがたとえいいものでも悪いものでも、
観る者がそれを好きだろうが嫌いだろうが、
周囲が納得せざるをえないような力のある映画作りをしている印象がある。
やはり彼の作品には『骨太』という表現がしっくりくる。
ただし、ただ骨太で荒っぽいだけではなく、それぞれの出演者の心の機微まで表現する繊細さもある。
いいセリフも多い。
終盤、プレーオフの試合のブレイクにトニーが選手に対して熱く語りかけるシーンは見ごたえがあった。
テーマも内容も基本的に女性が楽しめるようなものではないけれど、
多少なりと引き込まれてしまうような強さがあった。
キャメロン・ディアスの役どころも、最近の彼女にはないキャラクターで、悪くない。
基本的には人間関係を描いているからか、アメフトをほとんど知らない私でも楽しめた作品だった。
ラスト、アル・パチーノの演じるトニーの鮮やかで爽やかな転身も清々しい。
最終的には、不器用なのがカッコいい、スマートであることはカッコ悪い、とすら思わされた。
アメリカ人ならさらに楽しめる映画だったのかも。
ANY GIVEN SUNDAY
エニイ・ギブン・サンデー
1999/USA/164min
監督:オリヴァー・ストーン
原案:ダニエル・パイン/ジョン・ローガン
脚本:ジョン・ローガン/オリヴァー・ストーン
撮影:サルヴァトーレ・トチノ
音楽:ロビー・ロバートソン/ポール・ケリー /リチャード・ホロウィッツ
出演:アル・パチーノ/キャメロン・ディアス/デニス・クエイド
ジェームズ・ウッズ/ジェイミー・フォックス/LL・クール・J/マシュー・モディーン
ジム・ブラウン/ローレンス・テイラー/チャールトン・ヘストン/アン=マーグレット
エニイ ギブン サンデー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- メディア: DVD
"借りぐらしのアリエッティ" [movie-a]
色々なところから話を聞いていて、やっぱり観ようかなと思っていた、ジブリ最新作。
夏休みとって久々に実家に帰っていたこともあり、家族そろって観に行ってきました。
英メアリー・ノートンの傑作児童文学『床下の小人たち』を下敷きに、
日本のとある屋敷で繰り広げられる人と小人の物語。
まず驚いたのはその背景画の美しさ。
冒頭、翔が屋敷にはじめて連れてこられ、アリエッティらしき姿を目にする場面、
背景の柔らかい緑から、そよぐ風に揺れる植物や、緑の濃さなど、
1場面ごとに絵画のような完成度。
冒頭のシークエンスから小人の住まいへと視点が動き、たどり着いたのがアリエッティの部屋。
もう見事なまでの世界観は、さすがジブリと目を奪われる。
小人の家族は両親と年頃の娘アリエッティ。
父親がしっかり家族を守り、少し心配性で料理の上手なお母さんと、好奇心旺盛な娘。
何だか日本が失った、理想の家族像(とは言え迫害された核家族だけれど)のようにも見える。
声優陣も適材適所、まったくもってナイスキャスティング。
器用で頼りがいがあり、何でもできるガテンで寡黙な父に三浦友和。
心配性で料理が得意な母に大竹しのぶ。
父親譲りの芯の強さを持つアリエッティには志田未来。
そして何よりこのキャラクター。
小人たちを追い詰める俗物の家政婦に樹木希林。
このキャラクターは多分、樹木希林が声優をやるという前提で意図的にキャラクターを作りこんでいるような気がする。
この作品の主題は物質社会への警鐘、人々が忘れている世界への回帰、
そして異種族の男女(アリエッティと翔)の交流がメイン。
と、気を抜くと何だか模範生の読書感想文になってしまいそうだけれど、
それ以上に語ることが難しい作品であるのも確かだった。
映画としての完成度、ストーリー運びも何だか物足らず。
良くある「悪くはないんだけれど」という感想がいちばんに浮かんでしまう。
例えばアリエッティ自身、例えば翔、そのどちらをメインにしても、
もっとストーリーの膨らませようがあっただろうと思えて仕方なかった。
広がる可能性を秘めた作品だっただけにもったいない。
スピラーと言う同種族のキャラクターひとつとってももう少し色々描いて欲しかった。
良くも悪くも、こじんまりとした小品に仕上がっている。
観賞後の家族の感想にも勢いがなく。
90分少々という長さに収めようと思わず、もう少しボリュームを持たせてしっかり描きこんだ方が、
きっともう少し共感を得られたのではないだろうか。
これは宮崎駿が監督でないからなのか否か…気になるところだけれど。
この世界観は嫌いじゃないと言う人は多いと思う。
私自身、遠い昔佐藤さとるの「だれも知らない小さな国―コロボックル物語 」なんかを夢中になって読んでいたのを思い出した。
今でも人が取りつかれるドールハウスの魅力は元をただせば小人という存在、
その世界への憧憬かもしれない。
"借りぐらしのアリエッティ"
2010/JPN/94min
監督:米林宏昌
企画:宮崎駿
原作:メアリー・ノートン『床下の小人たち』(岩波少年文庫刊)
脚本:宮崎駿/丹羽圭子
音楽:セシル・コルベル
主題歌:セシル・コルベル『Arrietty's Song』
声の出演: 志田未来/神木隆之介/大竹しのぶ/竹下景子/藤原竜也/三浦友和/樹木希林
原作は読んでみたい。
佐藤さとるの世界観もなかなか楽しめます。
夏休みとって久々に実家に帰っていたこともあり、家族そろって観に行ってきました。
英メアリー・ノートンの傑作児童文学『床下の小人たち』を下敷きに、
日本のとある屋敷で繰り広げられる人と小人の物語。
まず驚いたのはその背景画の美しさ。
冒頭、翔が屋敷にはじめて連れてこられ、アリエッティらしき姿を目にする場面、
背景の柔らかい緑から、そよぐ風に揺れる植物や、緑の濃さなど、
1場面ごとに絵画のような完成度。
冒頭のシークエンスから小人の住まいへと視点が動き、たどり着いたのがアリエッティの部屋。
もう見事なまでの世界観は、さすがジブリと目を奪われる。
小人の家族は両親と年頃の娘アリエッティ。
父親がしっかり家族を守り、少し心配性で料理の上手なお母さんと、好奇心旺盛な娘。
何だか日本が失った、理想の家族像(とは言え迫害された核家族だけれど)のようにも見える。
声優陣も適材適所、まったくもってナイスキャスティング。
器用で頼りがいがあり、何でもできるガテンで寡黙な父に三浦友和。
心配性で料理が得意な母に大竹しのぶ。
父親譲りの芯の強さを持つアリエッティには志田未来。
そして何よりこのキャラクター。
小人たちを追い詰める俗物の家政婦に樹木希林。
このキャラクターは多分、樹木希林が声優をやるという前提で意図的にキャラクターを作りこんでいるような気がする。
この作品の主題は物質社会への警鐘、人々が忘れている世界への回帰、
そして異種族の男女(アリエッティと翔)の交流がメイン。
と、気を抜くと何だか模範生の読書感想文になってしまいそうだけれど、
それ以上に語ることが難しい作品であるのも確かだった。
映画としての完成度、ストーリー運びも何だか物足らず。
良くある「悪くはないんだけれど」という感想がいちばんに浮かんでしまう。
例えばアリエッティ自身、例えば翔、そのどちらをメインにしても、
もっとストーリーの膨らませようがあっただろうと思えて仕方なかった。
広がる可能性を秘めた作品だっただけにもったいない。
スピラーと言う同種族のキャラクターひとつとってももう少し色々描いて欲しかった。
良くも悪くも、こじんまりとした小品に仕上がっている。
観賞後の家族の感想にも勢いがなく。
90分少々という長さに収めようと思わず、もう少しボリュームを持たせてしっかり描きこんだ方が、
きっともう少し共感を得られたのではないだろうか。
これは宮崎駿が監督でないからなのか否か…気になるところだけれど。
この世界観は嫌いじゃないと言う人は多いと思う。
私自身、遠い昔佐藤さとるの「だれも知らない小さな国―コロボックル物語 」なんかを夢中になって読んでいたのを思い出した。
今でも人が取りつかれるドールハウスの魅力は元をただせば小人という存在、
その世界への憧憬かもしれない。
"借りぐらしのアリエッティ"
2010/JPN/94min
監督:米林宏昌
企画:宮崎駿
原作:メアリー・ノートン『床下の小人たち』(岩波少年文庫刊)
脚本:宮崎駿/丹羽圭子
音楽:セシル・コルベル
主題歌:セシル・コルベル『Arrietty's Song』
声の出演: 志田未来/神木隆之介/大竹しのぶ/竹下景子/藤原竜也/三浦友和/樹木希林
原作は読んでみたい。
佐藤さとるの世界観もなかなか楽しめます。
だれも知らない小さな国―コロボックル物語 1 (講談社青い鳥文庫 18-1)
- 作者: 佐藤 さとる
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1980/11/10
- メディア: 新書
"ALICE IN WONDERLAND-アリス・イン・ワンダーランド"(2010) [movie-a]
ティム・バートン×ジョニー・デップ×アリス。
この組み合わせに期待しないなんてもぐりなんじゃないだろうか。
…と思ってましたが…遅ればせながらようやく観に行ってきました。
観に行ったのはもちろん字幕版3D、公開後、だいぶたってますが、劇場はほぼ満席。
3Dで観るはじめてのティム・バートン作品でしたが、
画面が暗くて、ティム・バートン独特の色彩感が堪能できない気がした。
全編通して原作のイメージを壊さないよう、なんとなく配慮された作りになっている気がして仕方なかった。
ディズニーだからなのか…。
バートン独特の毒とオリジナリティが薄まっている感じ。
赤の女王、ヘレナ・ボナム・カーターとハートのジャックのクリスピン・グローヴァーは出色でしたが、
プロモーションではメインになっていたジョニー・デップ演じるマッドハッター(帽子屋)の存在感も薄め。
アリスを演じるミア・ワシコウスカも、
白の女王のアン・ハサウェイも、それぞれ美しく、チャーミングではあったけれど、
決定的に入れ込めるほどの強さはなく、
チェシャ猫、三月うさぎ、青虫のアブソレム、等々、
それぞれのキャラクターが魅力的でなかったわけではないけれど、
どうしてか、物足りなさがぬぐえない。
けれどチェシャ猫の、笑いを残しながら消えさる映像の実現が、
ああまで見事に可能だとは思わなかった。
面白いのに面白くない、魅力的なのに物足りない。
楽しめたのだけれど、そんな珍しい感覚に支配された作品。
期待し過ぎていたのかもしれない。
アリスの宿敵ジャバウォッキーの声がクリストファー・リーだったとは、恐れ入りましたが。
ALICE IN WONDERLAND
アリス・イン・ワンダーランド
2010/USA/109min
監督:ティム・バートン
原作:ルイス・キャロル
『不思議の国のアリス』/『鏡の国のアリス』
脚本:リンダ・ウールヴァートン
撮影:ダリウス・ウォルスキー
衣装デザイン:コリーン・アトウッド
編集:クリス・レベンゾン
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ミア・ワシコウスカ/ジョニー・デップ/ヘレナ・ボナム=カーター/アン・ハサウェイ/
クリスピン・グローヴァー/マット・ルーカス/アラン・リックマン/マイケル・シーン
スティーヴン・フライ/ティモシー・スポール/ポール・ホワイトハウス
バーバラ・ウィンザー/マイケル・ガフ/クリストファー・リー
アリス作品で私の中で断トツなのはこれ
本もあります
オリジナルはやっぱりあの挿絵に限る
この組み合わせに期待しないなんてもぐりなんじゃないだろうか。
…と思ってましたが…遅ればせながらようやく観に行ってきました。
観に行ったのはもちろん字幕版3D、公開後、だいぶたってますが、劇場はほぼ満席。
3Dで観るはじめてのティム・バートン作品でしたが、
画面が暗くて、ティム・バートン独特の色彩感が堪能できない気がした。
全編通して原作のイメージを壊さないよう、なんとなく配慮された作りになっている気がして仕方なかった。
ディズニーだからなのか…。
バートン独特の毒とオリジナリティが薄まっている感じ。
赤の女王、ヘレナ・ボナム・カーターとハートのジャックのクリスピン・グローヴァーは出色でしたが、
プロモーションではメインになっていたジョニー・デップ演じるマッドハッター(帽子屋)の存在感も薄め。
アリスを演じるミア・ワシコウスカも、
白の女王のアン・ハサウェイも、それぞれ美しく、チャーミングではあったけれど、
決定的に入れ込めるほどの強さはなく、
チェシャ猫、三月うさぎ、青虫のアブソレム、等々、
それぞれのキャラクターが魅力的でなかったわけではないけれど、
どうしてか、物足りなさがぬぐえない。
けれどチェシャ猫の、笑いを残しながら消えさる映像の実現が、
ああまで見事に可能だとは思わなかった。
面白いのに面白くない、魅力的なのに物足りない。
楽しめたのだけれど、そんな珍しい感覚に支配された作品。
期待し過ぎていたのかもしれない。
アリスの宿敵ジャバウォッキーの声がクリストファー・リーだったとは、恐れ入りましたが。
ALICE IN WONDERLAND
アリス・イン・ワンダーランド
2010/USA/109min
監督:ティム・バートン
原作:ルイス・キャロル
『不思議の国のアリス』/『鏡の国のアリス』
脚本:リンダ・ウールヴァートン
撮影:ダリウス・ウォルスキー
衣装デザイン:コリーン・アトウッド
編集:クリス・レベンゾン
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ミア・ワシコウスカ/ジョニー・デップ/ヘレナ・ボナム=カーター/アン・ハサウェイ/
クリスピン・グローヴァー/マット・ルーカス/アラン・リックマン/マイケル・シーン
スティーヴン・フライ/ティモシー・スポール/ポール・ホワイトハウス
バーバラ・ウィンザー/マイケル・ガフ/クリストファー・リー
アリス・イン・ワンダーランド ブルーレイ+DVDセット (ファンタジー・アートケース 特典付き) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー:
- メディア: Blu-ray
アリス作品で私の中で断トツなのはこれ
本もあります
オリジナルはやっぱりあの挿絵に限る
"ANGEL-A"-アンジェラ(2006) [movie-a]
リュック・ベッソン。
賛否両論の分かれる監督、ではないだろうか。
個人的には「好き」と言いたいけれど「好き」と言いきれない。
いや「好き」と言いきってもいいのだけれど、それは特定の作品だけで…と思わず言い訳をしたくなってしまう。
ともあれ映画を好きでこの名前を知らない人はまずいないだろうし、
私がいわゆる映画好きになったきっかけも、実は『グラン・ブルー』だった。
当時あんまりぱっとしない高校生活を送っていた私は、
この作品を観てヨーロッパ映画に傾倒し、それから色んないい作品を観て、どんどん映画が好きになった。
『最後の戦い』のモノクロで台詞の少ない、斬新な映像は衝撃だったし、
『サブウェイ』や『ニキータ』もその世界観にはまった。
ちょっとアニメチックな、現実と非現実の狭間で起きている出来事を映画にしたような感じ。
いい映画、という範疇とは少し違う、あえて言葉にするなら何となく強引で、引き込まれる魅力がある。
ハリウッドとはベクトルの違う娯楽映画。
そんな魅力をずっと感じていた、ちょっとした思い入れのある監督である。
にもかかわらず、彼の作品を劇場で観たのは『フィフス・エレメント』が最後。
『ジャンヌ・ダルク』以降はまったくと言っていいほど興味が湧かなかった。
もう、彼が私が好きになるような作品は撮らないだろう、なぜかそんな確信があった。
実際、いま撮られている『アーサーとミニモイ』三部作で彼は監督業からきっぱり足を洗うとのこと。
それはそれで寂しい気もするが、彼が監督としてもうやりたいことがないのなら、まあ仕方ないのかな、
そんな感慨を持っていた。
と、言うわけでこの作品も劇場に観に行くことはなかったけれど、
リュック・ベッソン久々の「モノクロ映画」ということと、
「天使とダメ男との邂逅」というテーマは、何となくずっと気にはなっていた。
メインキャストのふたりが個性的。
今現在映画も撮っているというスーパーモデル、リー・ラスムッセンと、
アメリにも出ていたフランスのコメディ俳優、ジャメル・ドゥブーズ。
このビジュアルの違いは完全にアニメの世界、
B.D.(bande dessinée:ベルギー・フランスを中心とした漫画のこと)の世界という感じ。
リー・ラスムッセン演じるアンジェラはエンキ・ビラルの絵を思い出させる。
8等身も9等身もあるような長身、美形、たくましく強く、けれど繊細なヒロイン像は、
リュック・ベッソンの永遠のアイコンなのだろう。
CAUTION!!
**この後の文章にはストーリーの一部が記載されています。
-------------------------------------------------------------------
莫大な借金を背負い、追い詰められ、人生を捨てようとしたダメ男、アンドレ(ジャメル・ドゥブーズ)は、
飛び降りようとした橋で同じように飛び降りようとするモデルのような美人アンジェラ(リー・ラスムッセン)と出会う。
臆病なくせに虚栄心が強く典型的なダメ男でいじめられっこタイプのアンドレは、
美人で万能な彼女と行動することにより、次第に道が開かれていくのを感じ、
アンジェラの奔放で強引な行動に振り回されながらも彼女に惹かれていく。
その過程で彼の優しさや温かさ、純粋さが引き出されていくように見えるのが不思議だ。
なぜ、アンジェラはアンドレを導くのか。
その理由はこうだ。
アンジェラは天使で、アンドレを正しい道に導くために天から遣わされたという。
端的に表現してしまうと、ダメ男の再生物語、かつ天使という異形のものとのラブストーリー。
「自分自身を愛していると言ってあげて」
アンジェラがアンドレに鏡の前で言うセリフ。
このシーンはラストシーンよりも心に沁みる。
うまく言えないけれど、もう少しでもっと良くなった作品かもしれないのにな、惜しいな、という気がする作品だった。
昔の作品にあったいい意味での「荒さ」はなく、ストーリーも単純でわかりやすいが何となく深みに欠ける気がし、
ANGEL-A=ANGELAという隠喩もわかりやす過ぎ、
時間が短かったせいもあってかこじんまりまとまってしまったような気がする。
映像はいい意味でも悪い意味でもとても美しく、
モノクロのパリの街は、近未来的な、架空の街のような雰囲気で、
本来の美しさと違った意味で悪くなかった。
そう、全体的に悪くはなかった。
でも、悪くない、という感想は心を動かされなかったということであり、
そういう意味でも、この映画に感じた物足りなさは本当の意味で、
映画にとっては致命的なものなのかもしれない。
多分これからも、私にとってのリュック・ベッソンのベストは『最後の戦い』であり、『ニキータ』であり、
『レオン』であり、『グランブルー』であり続けるだろう。
"ANGEL-A"-アンジェラ
2006/FRA/90min
監督:リュック・ベッソン
製作:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン
撮影:ティエリー・アルボガスト
衣装デザイン:マルティーヌ・ラパン
編集:フレデリック・トラヴァル
音楽:アンニャ・ガルバレク
出演:ジャメル・ドゥブーズ/リー・ラスムッセン/ジルベール・メルキ
セルジュ・リアブキン/ローラン・ジュムークール
上述したエンキ・ビラルの作品。
賛否両論の分かれる監督、ではないだろうか。
個人的には「好き」と言いたいけれど「好き」と言いきれない。
いや「好き」と言いきってもいいのだけれど、それは特定の作品だけで…と思わず言い訳をしたくなってしまう。
ともあれ映画を好きでこの名前を知らない人はまずいないだろうし、
私がいわゆる映画好きになったきっかけも、実は『グラン・ブルー』だった。
当時あんまりぱっとしない高校生活を送っていた私は、
この作品を観てヨーロッパ映画に傾倒し、それから色んないい作品を観て、どんどん映画が好きになった。
『最後の戦い』のモノクロで台詞の少ない、斬新な映像は衝撃だったし、
『サブウェイ』や『ニキータ』もその世界観にはまった。
ちょっとアニメチックな、現実と非現実の狭間で起きている出来事を映画にしたような感じ。
いい映画、という範疇とは少し違う、あえて言葉にするなら何となく強引で、引き込まれる魅力がある。
ハリウッドとはベクトルの違う娯楽映画。
そんな魅力をずっと感じていた、ちょっとした思い入れのある監督である。
にもかかわらず、彼の作品を劇場で観たのは『フィフス・エレメント』が最後。
『ジャンヌ・ダルク』以降はまったくと言っていいほど興味が湧かなかった。
もう、彼が私が好きになるような作品は撮らないだろう、なぜかそんな確信があった。
実際、いま撮られている『アーサーとミニモイ』三部作で彼は監督業からきっぱり足を洗うとのこと。
それはそれで寂しい気もするが、彼が監督としてもうやりたいことがないのなら、まあ仕方ないのかな、
そんな感慨を持っていた。
と、言うわけでこの作品も劇場に観に行くことはなかったけれど、
リュック・ベッソン久々の「モノクロ映画」ということと、
「天使とダメ男との邂逅」というテーマは、何となくずっと気にはなっていた。
メインキャストのふたりが個性的。
今現在映画も撮っているというスーパーモデル、リー・ラスムッセンと、
アメリにも出ていたフランスのコメディ俳優、ジャメル・ドゥブーズ。
このビジュアルの違いは完全にアニメの世界、
B.D.(bande dessinée:ベルギー・フランスを中心とした漫画のこと)の世界という感じ。
リー・ラスムッセン演じるアンジェラはエンキ・ビラルの絵を思い出させる。
8等身も9等身もあるような長身、美形、たくましく強く、けれど繊細なヒロイン像は、
リュック・ベッソンの永遠のアイコンなのだろう。
CAUTION!!
**この後の文章にはストーリーの一部が記載されています。
-------------------------------------------------------------------
莫大な借金を背負い、追い詰められ、人生を捨てようとしたダメ男、アンドレ(ジャメル・ドゥブーズ)は、
飛び降りようとした橋で同じように飛び降りようとするモデルのような美人アンジェラ(リー・ラスムッセン)と出会う。
臆病なくせに虚栄心が強く典型的なダメ男でいじめられっこタイプのアンドレは、
美人で万能な彼女と行動することにより、次第に道が開かれていくのを感じ、
アンジェラの奔放で強引な行動に振り回されながらも彼女に惹かれていく。
その過程で彼の優しさや温かさ、純粋さが引き出されていくように見えるのが不思議だ。
なぜ、アンジェラはアンドレを導くのか。
その理由はこうだ。
アンジェラは天使で、アンドレを正しい道に導くために天から遣わされたという。
端的に表現してしまうと、ダメ男の再生物語、かつ天使という異形のものとのラブストーリー。
「自分自身を愛していると言ってあげて」
アンジェラがアンドレに鏡の前で言うセリフ。
このシーンはラストシーンよりも心に沁みる。
うまく言えないけれど、もう少しでもっと良くなった作品かもしれないのにな、惜しいな、という気がする作品だった。
昔の作品にあったいい意味での「荒さ」はなく、ストーリーも単純でわかりやすいが何となく深みに欠ける気がし、
ANGEL-A=ANGELAという隠喩もわかりやす過ぎ、
時間が短かったせいもあってかこじんまりまとまってしまったような気がする。
映像はいい意味でも悪い意味でもとても美しく、
モノクロのパリの街は、近未来的な、架空の街のような雰囲気で、
本来の美しさと違った意味で悪くなかった。
そう、全体的に悪くはなかった。
でも、悪くない、という感想は心を動かされなかったということであり、
そういう意味でも、この映画に感じた物足りなさは本当の意味で、
映画にとっては致命的なものなのかもしれない。
多分これからも、私にとってのリュック・ベッソンのベストは『最後の戦い』であり、『ニキータ』であり、
『レオン』であり、『グランブルー』であり続けるだろう。
"ANGEL-A"-アンジェラ
2006/FRA/90min
監督:リュック・ベッソン
製作:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン
撮影:ティエリー・アルボガスト
衣装デザイン:マルティーヌ・ラパン
編集:フレデリック・トラヴァル
音楽:アンニャ・ガルバレク
出演:ジャメル・ドゥブーズ/リー・ラスムッセン/ジルベール・メルキ
セルジュ・リアブキン/ローラン・ジュムークール
上述したエンキ・ビラルの作品。
"An Inconvenient Truth"-不都合な真実(2006) [movie-a]
この映画は元アメリカ合衆国副大統領アル・ゴアが、ライフ・ワークとして行っている、
地球温暖化についての講演を中心に構成されたドキュメンタリー。
彼は少なくとも1000回以上、この地球温暖化についての講演を行ってきたという。
地球温暖化によって起きる、数々の弊害について語るゴアと、彼の追想でこのドキュメンタリーは進む。
CAUTION!!
**この後の文章にはストーリーの一部が記載されています。
-------------------------------------------------------------------
先進国でも後進国でも、国家が、企業が、個人が、いまだ懲りずに同様に吐き出し続けるCO2。
そのCO2により地球温暖化が進んでいることは、私たちも学校やニュースで聞き知っているところ。
この現実が何を引き起こしているか、というトピックを中心に話は進んでゆく。
CO2の増加により北極の氷が溶けることによって太陽が反射せずに海水を直撃しさらに水温を上げる。
温暖化は海水の蒸発を促し、雲に水分を蓄えさせる、一方で地表の水分の蒸発も促すため、
必然的に局地的に干ばつと、強烈で突発的な雨をもたらす。
実際ここ10年程の間に、自分たちが子どもだったころにはありえなかったような気候が現実のものとなっているのは、
日本でも皆が気づいて問題だと思っているはず。
温暖化は北極の氷を溶かして、ホッキョクグマの溺死と言うギャグのような話を現実のものとし、
アラスカの永久凍土を溶かして建物や輸送道路に影響を与え、
さらに南極のラーセン棚氷やグリーンランドでも大規模な氷を溶かす。
ゴアの推測では世界中の海面が6mあがることにより、
オランダが沈み、北京では2000万人が被災、上海ではその倍の4000万。
カルカッタとバングラデシュでは6000万人。
NYでは9.11のワールドトレードセンター跡地が水没、
日本は出てこなかったけれど言うまでもないだろう。
地上でも海中でも、温度の上昇で今まで生き残れなかった生物が生き残り、
本来あるべき生態系のバランスを崩し、弊害を起こし、
昆虫や動物などを媒介とした、いままでにありえなかった病気を蔓延させる。
このドキュメンタリーを観て、すごくわかりやすいなと思ったことがひとつ。
世界はひとつで、どこかで起こったことがその場所だけで完結せず、
巡り巡って他のどこかで影響を与える。
自分が投げ捨てた空き缶が、後で他の誰かに迷惑をかけるかもしれない。そういうことだと思う。
さて、果たしてゴアはこの啓蒙活動を何を目的として行っているのだろう??
少数の利益のために「不都合な真実」を隠そうとする人々に対する警告と、
(多分、温暖化を否定していた、かつて大統領の椅子を争ったブッシュ政権自体にも)
何も知らずにいる国民への語りかけだろう。
この「不都合な真実」は誰のために、どこに隠されるのか。
特定の経済団体や政治家、利益をとことん追求するアメリカ型資本主義の弊害が、あからさまに見え隠れする。
京都議定書が米国のブッシュ政権の離脱によってなかなか批准されなかったのは、それほど昔の話ではない。
ゴアによると、自動車の燃費基準も、世界中のどこの国よりもアメリカが低い。
中国でさえ、アメリカよりはるかに高い基準地で車を作っているのに。
環境保護に傾くと、経済活動を阻害するというのだ。
カリフォルニア州が勇敢にも排ガスの規制法を厳しいものに変えると、業界団体から抗議を受ける。
それでも世界的に成功している車のメーカーは低燃費車に強いトヨタやホンダであり、
フォードやGMではないというデータが出てくる。
このドキュメンタリーから数年が経過しているけれど、
この話を聞いて、現在のトヨタのアメリカでの状況を見ていると、
自国の経済活動のためなら手段を選ばない国アメリカ、という妙なイメージから推測される、
何かしら陰謀めいたものを感じてしまうのは、私が日本人だからなのだろうか??
最後にゴアは呼び掛ける。
我々は正しい選択もできる、と。
CO2排出量世界一の国、アメリカ。
アメリカという特殊な国は、世界一の経済大国であり、その経済活動のためなら傲慢さを隠さない国。
ゴアの発言の偏ったところ(例えば海水の上昇率)や根拠がない点も世間では取りざたされたけれど、
そんな特殊な国で副大統領まで登りつめたような人物が、
ライフワークとしてこのような活動を行っていることはひとつの救いだと思う。
この映画を観ていて、2000年の大統領選挙、ブッシュではなく、彼が当選していたら…
大きく変わってはいないかもしれないけれど、少しは希望があったかなと言う気がしてしまう。
ゴアはこの映画の後、ノーベル平和賞も受賞している。
それにしても痩せても枯れても元アメリカ合衆国大統領候補。
ブレインはいるのだろうが、あれだけの量のデータを基に、滔々と話し続ける姿はさすがの貫録だと思った。
このDVDでは映画公開後に新たに確認された事実も特典映像として収録されていて、
講演の未収録シーンも織り込まれているので、せっかくなら一応特典部分まで含めて観ることをお勧めします。
特典とはいえ結構ボリュームもありますが。
さて、こんなに遅くまで暖房つけて起きていないで、
早くお風呂に入ってベッドに入ってエネルギー排出量を減らさなくては、ね。
"AN INCONVENIENT TRUTH"
不都合な真実
2006/USA/96min
監督:デイヴィス・グッゲンハイム
製作:ローレンス・ベンダー/スコット・Z・バーンズ/ローリー・デヴィッド
製作総指揮: デイヴィス・グッゲンハイム/ジェフ・スコール
編集:ジェイ・キャシディ/ダン・スウィエトリク
音楽:マイケル・ブルック
出演:アル・ゴア
地球温暖化についての講演を中心に構成されたドキュメンタリー。
彼は少なくとも1000回以上、この地球温暖化についての講演を行ってきたという。
地球温暖化によって起きる、数々の弊害について語るゴアと、彼の追想でこのドキュメンタリーは進む。
CAUTION!!
**この後の文章にはストーリーの一部が記載されています。
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先進国でも後進国でも、国家が、企業が、個人が、いまだ懲りずに同様に吐き出し続けるCO2。
そのCO2により地球温暖化が進んでいることは、私たちも学校やニュースで聞き知っているところ。
この現実が何を引き起こしているか、というトピックを中心に話は進んでゆく。
CO2の増加により北極の氷が溶けることによって太陽が反射せずに海水を直撃しさらに水温を上げる。
温暖化は海水の蒸発を促し、雲に水分を蓄えさせる、一方で地表の水分の蒸発も促すため、
必然的に局地的に干ばつと、強烈で突発的な雨をもたらす。
実際ここ10年程の間に、自分たちが子どもだったころにはありえなかったような気候が現実のものとなっているのは、
日本でも皆が気づいて問題だと思っているはず。
温暖化は北極の氷を溶かして、ホッキョクグマの溺死と言うギャグのような話を現実のものとし、
アラスカの永久凍土を溶かして建物や輸送道路に影響を与え、
さらに南極のラーセン棚氷やグリーンランドでも大規模な氷を溶かす。
ゴアの推測では世界中の海面が6mあがることにより、
オランダが沈み、北京では2000万人が被災、上海ではその倍の4000万。
カルカッタとバングラデシュでは6000万人。
NYでは9.11のワールドトレードセンター跡地が水没、
日本は出てこなかったけれど言うまでもないだろう。
地上でも海中でも、温度の上昇で今まで生き残れなかった生物が生き残り、
本来あるべき生態系のバランスを崩し、弊害を起こし、
昆虫や動物などを媒介とした、いままでにありえなかった病気を蔓延させる。
このドキュメンタリーを観て、すごくわかりやすいなと思ったことがひとつ。
世界はひとつで、どこかで起こったことがその場所だけで完結せず、
巡り巡って他のどこかで影響を与える。
自分が投げ捨てた空き缶が、後で他の誰かに迷惑をかけるかもしれない。そういうことだと思う。
さて、果たしてゴアはこの啓蒙活動を何を目的として行っているのだろう??
少数の利益のために「不都合な真実」を隠そうとする人々に対する警告と、
(多分、温暖化を否定していた、かつて大統領の椅子を争ったブッシュ政権自体にも)
何も知らずにいる国民への語りかけだろう。
この「不都合な真実」は誰のために、どこに隠されるのか。
特定の経済団体や政治家、利益をとことん追求するアメリカ型資本主義の弊害が、あからさまに見え隠れする。
京都議定書が米国のブッシュ政権の離脱によってなかなか批准されなかったのは、それほど昔の話ではない。
ゴアによると、自動車の燃費基準も、世界中のどこの国よりもアメリカが低い。
中国でさえ、アメリカよりはるかに高い基準地で車を作っているのに。
環境保護に傾くと、経済活動を阻害するというのだ。
カリフォルニア州が勇敢にも排ガスの規制法を厳しいものに変えると、業界団体から抗議を受ける。
それでも世界的に成功している車のメーカーは低燃費車に強いトヨタやホンダであり、
フォードやGMではないというデータが出てくる。
このドキュメンタリーから数年が経過しているけれど、
この話を聞いて、現在のトヨタのアメリカでの状況を見ていると、
自国の経済活動のためなら手段を選ばない国アメリカ、という妙なイメージから推測される、
何かしら陰謀めいたものを感じてしまうのは、私が日本人だからなのだろうか??
最後にゴアは呼び掛ける。
我々は正しい選択もできる、と。
CO2排出量世界一の国、アメリカ。
アメリカという特殊な国は、世界一の経済大国であり、その経済活動のためなら傲慢さを隠さない国。
ゴアの発言の偏ったところ(例えば海水の上昇率)や根拠がない点も世間では取りざたされたけれど、
そんな特殊な国で副大統領まで登りつめたような人物が、
ライフワークとしてこのような活動を行っていることはひとつの救いだと思う。
この映画を観ていて、2000年の大統領選挙、ブッシュではなく、彼が当選していたら…
大きく変わってはいないかもしれないけれど、少しは希望があったかなと言う気がしてしまう。
ゴアはこの映画の後、ノーベル平和賞も受賞している。
それにしても痩せても枯れても元アメリカ合衆国大統領候補。
ブレインはいるのだろうが、あれだけの量のデータを基に、滔々と話し続ける姿はさすがの貫録だと思った。
このDVDでは映画公開後に新たに確認された事実も特典映像として収録されていて、
講演の未収録シーンも織り込まれているので、せっかくなら一応特典部分まで含めて観ることをお勧めします。
特典とはいえ結構ボリュームもありますが。
さて、こんなに遅くまで暖房つけて起きていないで、
早くお風呂に入ってベッドに入ってエネルギー排出量を減らさなくては、ね。
"AN INCONVENIENT TRUTH"
不都合な真実
2006/USA/96min
監督:デイヴィス・グッゲンハイム
製作:ローレンス・ベンダー/スコット・Z・バーンズ/ローリー・デヴィッド
製作総指揮: デイヴィス・グッゲンハイム/ジェフ・スコール
編集:ジェイ・キャシディ/ダン・スウィエトリク
音楽:マイケル・ブルック
出演:アル・ゴア
不都合な真実 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- メディア: DVD
私たちの選択 Al Gore OUR CHOICE 温暖化を解決するための18章
- 作者: アル ゴア
- 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
- 発売日: 2009/12/17
- メディア: 単行本
"AVATAR"-アバター(2009) [movie-a]
遅ればせながらようやく観ました"AVATAR"-アバター@新宿バルト9。
正直色々なところで評価されていたし、ずっと観たいと思っていたけれど、
かなりの長時間ということもあり、心と体に余裕がある日でないと…と思っていた作品。
キャメロン監督の構想から14年、
この作品が持つテーマと、映像技術の進歩とがようやくリンクして制作に至ったということだけれど、
みなさんが言っていることをここでもう一度声を大にして言いたい。
「今年観るべき一本」
テクニカルなことは本当によくわからないし、なにせ3Dで映画を観るのが初めてなもので、
映像の問題について細かいことはあまり言えない。
ただひとつだけ言うと、バルト9はXpanD方式で、とにかくメガネが重いのが難点。
上映中、しょっちゅうメガネの位置を直していたのだけれど、
その不快感と2時間半を超す上映時間が苦にならないくらい、眼は画面に釘付けだった。
まずその世界観がすごい。
緑を失った地球から、貴重な鉱物を求めてやってくる人間(スカイピープル)たち。
主人公ジェイクは地球上での戦争で負傷して下半身不随になった元海兵隊員。
彼はアルファ・ケンタウリ系惑星・ポリフェマスの最大の衛星パンドラでのアバター・プロジェクトの参加者に選ばれる。
人間に似てはいるが高い身体能力を持ち、自然と調和して生きるナヴィ族。
アバター・プロジェクトとはそのナヴィ族のDNAと人間のDNAを掛け合わせた肉体アバターに意識をリンクさせ、
その肉体を使って彼らの中に溶け込むことで、彼らの情報を得、侵略の手がかりとするプロジェクト。
ジェイクはそのプロジェクトでアバターの姿で再び自由に動く体を手に入れ、
その身体を使ってナヴィの中に溶け込んでゆく。
ストーリーはキャメロン監督自身が語るように、ケビン・コスナーのダンス・ウィズ・ウルブズの宇宙バージョン。
人間たちが勝手に未開の種族と断定し、対話を図ろうとする一部の人たちを除いて、
彼らを排除しようとする白人vsスー族の図式がそのまま、
身勝手な人間vsナヴィ族の図式と重なる。
その関係性の根底にあるのは破壊を止めない人間のエゴと、
そのエゴと戦う人々、そして自然。
キャメロン監督のインスピレーションの源は様々なところにあるんだろうと思う。
その中での設定の矛盾や他の映画やアニメとの相似性はおいても、
彼が作り上げた世界観は多くの人の賛同を呼ぶところだろうと思う。
ナヴィ族の設定やパンドラの動植物、すべてが眼を見張る。
一方で対する人間はステレオタイプが多いような気がするのだけれど、
そういった点がさらにナヴィ族ととの構図を際立たせる感もある。
ナヴィ族はビジュアル的にも美しい。
ナヴィ族など役者は比較的あまり有名でない人が多いのだけれど、
キーパーソンであり、ジェイクと恋仲になるネイティリの母親で巫女のモアトが、
バグダッド・カフェのCCH・パウンダー、
ジェイクと対峙するあまりにも典型的な軍人タイプ、マイルズ大佐が、
パブリック・エネミーズで寡黙で男気あるFBI捜査官を演じていたスティーヴン・ラング、
ジェイクやナヴィ族に加担する男前な女性パイロット、トゥルーディに、
ガールファイトの ミシェル・ロドリゲス
そしてアバタープロジェクトのキーパーソン、グレイス博士にシガニー・ウィーバー。
映画の原点、映像で世界を驚かせる、という、リュミエール兄弟以後、
人が素晴らしい映像を観たときに感じるシンプルな「すごい!!!」という感情を、
素直に引き出してくれる作品だった。
ありがとうジェームズ・キャメロン。
"AVATAR"-アバター
2009/USA/162min
監督:ジェームズ・キャメロン
製作:ジェームズ・キャメロン/ジョン・ランドー
脚本:ジェームズ・キャメロン
撮影:マウロ・フィオーレ
プロダクションデザイン:リック・カーター/ロバート・ストロンバーグ
衣装デザイン:デボラ・スコット
音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:サム・ワーシントン/ゾーイ・サルダナ/シガーニー・ウィーヴァー
スティーヴン・ラング/ミシェル・ロドリゲス/ジョヴァンニ・リビシ
ジョエル・デヴィッド・ムーア/CCH・パウンダー モアト
ウェス・ステューディ エイトゥカン/ラズ・アロンソ
映画の後はBLUENOTE JAPANがプロデュースしているので気になっていた、
Brooklyn Parlorブルックリンパーラー
http://www.brooklynparlor.co.jp/
新宿バルト9の地下で、雰囲気も良くて食事もまあまあ美味しかった。
食べたのはチキンと半熟玉子のサラダ(シーザーサラダ風)、シラスと菜の花のパスタ、メカジキのソテー。
時間が遅かったのであまり見られなかったけれど、本のセレクションも気になるところ。
家に帰ってもアバターの余韻さめやらず。
もう一度、できればIMAXでもぜひ観てみたい。
参考までに。こちらもなかなかいい作品。久しぶりに観てみたい。
正直色々なところで評価されていたし、ずっと観たいと思っていたけれど、
かなりの長時間ということもあり、心と体に余裕がある日でないと…と思っていた作品。
キャメロン監督の構想から14年、
この作品が持つテーマと、映像技術の進歩とがようやくリンクして制作に至ったということだけれど、
みなさんが言っていることをここでもう一度声を大にして言いたい。
「今年観るべき一本」
テクニカルなことは本当によくわからないし、なにせ3Dで映画を観るのが初めてなもので、
映像の問題について細かいことはあまり言えない。
ただひとつだけ言うと、バルト9はXpanD方式で、とにかくメガネが重いのが難点。
上映中、しょっちゅうメガネの位置を直していたのだけれど、
その不快感と2時間半を超す上映時間が苦にならないくらい、眼は画面に釘付けだった。
まずその世界観がすごい。
緑を失った地球から、貴重な鉱物を求めてやってくる人間(スカイピープル)たち。
主人公ジェイクは地球上での戦争で負傷して下半身不随になった元海兵隊員。
彼はアルファ・ケンタウリ系惑星・ポリフェマスの最大の衛星パンドラでのアバター・プロジェクトの参加者に選ばれる。
人間に似てはいるが高い身体能力を持ち、自然と調和して生きるナヴィ族。
アバター・プロジェクトとはそのナヴィ族のDNAと人間のDNAを掛け合わせた肉体アバターに意識をリンクさせ、
その肉体を使って彼らの中に溶け込むことで、彼らの情報を得、侵略の手がかりとするプロジェクト。
ジェイクはそのプロジェクトでアバターの姿で再び自由に動く体を手に入れ、
その身体を使ってナヴィの中に溶け込んでゆく。
ストーリーはキャメロン監督自身が語るように、ケビン・コスナーのダンス・ウィズ・ウルブズの宇宙バージョン。
人間たちが勝手に未開の種族と断定し、対話を図ろうとする一部の人たちを除いて、
彼らを排除しようとする白人vsスー族の図式がそのまま、
身勝手な人間vsナヴィ族の図式と重なる。
その関係性の根底にあるのは破壊を止めない人間のエゴと、
そのエゴと戦う人々、そして自然。
キャメロン監督のインスピレーションの源は様々なところにあるんだろうと思う。
その中での設定の矛盾や他の映画やアニメとの相似性はおいても、
彼が作り上げた世界観は多くの人の賛同を呼ぶところだろうと思う。
ナヴィ族の設定やパンドラの動植物、すべてが眼を見張る。
一方で対する人間はステレオタイプが多いような気がするのだけれど、
そういった点がさらにナヴィ族ととの構図を際立たせる感もある。
ナヴィ族はビジュアル的にも美しい。
ナヴィ族など役者は比較的あまり有名でない人が多いのだけれど、
キーパーソンであり、ジェイクと恋仲になるネイティリの母親で巫女のモアトが、
バグダッド・カフェのCCH・パウンダー、
ジェイクと対峙するあまりにも典型的な軍人タイプ、マイルズ大佐が、
パブリック・エネミーズで寡黙で男気あるFBI捜査官を演じていたスティーヴン・ラング、
ジェイクやナヴィ族に加担する男前な女性パイロット、トゥルーディに、
ガールファイトの ミシェル・ロドリゲス
そしてアバタープロジェクトのキーパーソン、グレイス博士にシガニー・ウィーバー。
映画の原点、映像で世界を驚かせる、という、リュミエール兄弟以後、
人が素晴らしい映像を観たときに感じるシンプルな「すごい!!!」という感情を、
素直に引き出してくれる作品だった。
ありがとうジェームズ・キャメロン。
"AVATAR"-アバター
2009/USA/162min
監督:ジェームズ・キャメロン
製作:ジェームズ・キャメロン/ジョン・ランドー
脚本:ジェームズ・キャメロン
撮影:マウロ・フィオーレ
プロダクションデザイン:リック・カーター/ロバート・ストロンバーグ
衣装デザイン:デボラ・スコット
音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:サム・ワーシントン/ゾーイ・サルダナ/シガーニー・ウィーヴァー
スティーヴン・ラング/ミシェル・ロドリゲス/ジョヴァンニ・リビシ
ジョエル・デヴィッド・ムーア/CCH・パウンダー モアト
ウェス・ステューディ エイトゥカン/ラズ・アロンソ
映画の後はBLUENOTE JAPANがプロデュースしているので気になっていた、
Brooklyn Parlorブルックリンパーラー
http://www.brooklynparlor.co.jp/
新宿バルト9の地下で、雰囲気も良くて食事もまあまあ美味しかった。
食べたのはチキンと半熟玉子のサラダ(シーザーサラダ風)、シラスと菜の花のパスタ、メカジキのソテー。
時間が遅かったのであまり見られなかったけれど、本のセレクションも気になるところ。
家に帰ってもアバターの余韻さめやらず。
もう一度、できればIMAXでもぜひ観てみたい。
参考までに。こちらもなかなかいい作品。久しぶりに観てみたい。
ダンス・ウィズ・ウルブズ スペシャル・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: 東北新社
- メディア: DVD